- 2014.08.19
- 書評
愛に対価は必用なのか?
癌と闘った花嫁と、若き夫の7年間
文:瞳 みのる (音楽家・著作家)
『恵恵 日中の海を越えた愛』 (恵恵・岡崎健太・付楠 著/泉京鹿 訳)
ジャンル :
#ノンフィクション
日中ともに純粋無償の愛を求めることは難しい
中国でかなり以前大ヒットした曲がある。そのタイトルは「愛の対価」という。僕はあるとき多くの中国人の妙齢の女性に、「愛には対価というものが必要か」と尋ねてみたところ、その答えは全て例外なく、当然「愛には対価が必要だ」というものだった。僕は究極の愛はその対象を愛したことで全て報われていると考えるのだが。
また、男性の立場からこの書において僕が気になった箇所がある。それは「愛には順位があるのか」ということ。母親の手記では、娘恵恵が死に臨んで「心残りなこと」として、次の順で挙げている。
1.自分が働けないこと。2.父母の面倒を見られないこと。3.夫と別れること。
確かに、その選択は難しいが、その辺りが悩ましい。もし、子供が彼らの間に生れれば、その順位はなどと僕はついつい考えてしまう。日本でも中国ほどではないにしても、この国にあって純粋無償、究極の愛を求めることは極めて難しい、それが現実として余りにも稀有である故に。
最後に、すでに他界した、恵恵に次のようなことを言っても詮方ないのであるが、このような無私と博愛精神に溢れた人にこそ長生きし、人の親になってもらいたかった。そうすれば彼女の言動がもっと多くの人々に多大な説得力を持っただろうにと惜しまれる。
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