書評

ヒーロー、ヒロインたちが遺した 言葉の宝物を大切に心に秘めて

文: 阿川 佐和子

『アガワ対談傑作選 追悼編 「聞く力」文庫3』 (阿川佐和子 著)

 パク・ヨンハさんの訃報はショックでした。当時の私は韓流ブームに乗り切れず、正直なところ、パクさんにお会いすることにさほど積極的な関心がありませんでした。ところが会ってみれば、なんと素直で気遣いのある好青年でしょう。通訳さんを介しての対談にもかかわらず、訳される前から互いに言いたいことを察知できる瞬間がたびたびありました。外国人のゲストと言葉を越えてこんなふうに心が通じ合うほど嬉しいことはありません。彼がどれほど日本のファンに感謝しているかは、対談中も、その数日後のコンサートのときにもひしひしと伝わってきて、まるで愛しい弟ができたような気持で「ずっと活躍してくれよぉ」と遠くから応援していたのに、不幸な結果になってしまい、悲しいです。

 本書にご登場いただいたゲストの思い出を一人ずつ語っているときりがなく、本編より長くなってしまう恐れがあるので、ここらで留めることにいたしましょう。ただ、人は必ず死ぬと知っていても、生きている間はその実感がありません。今さらとは思うものの、こんなことならもう少し大事なことを伺うべきだったのではなかったかと、悔やむ気持が残ります。でも悔やんだところで、あの方々は戻ってきてくれない。だからこそ、残してくださった数々の言葉を反芻し、宝物として大切に心に秘めて生きていきたいと思います。どうせ私もいつかはアチラヘ行く身です。そのときに、伺いそびれたお話の続きをしようと楽しみにしております。どうか読者の皆様も、明治・大正・昭和から平成を生き抜いて、輝いて、そして逝ってしまった二十六人のヒーロー、ヒロインを、本書を通して久しぶりに思い出してくださいませ。きっとこの会話の隙間から、さらに思い起こされる懐かしき光景が浮かび上がってくるにちがいありません。

 なんかちょっと、しみじみしちゃいましたね。

 ちなみに『「聞く力」文庫』はこれにてとりあえずおしまい。寂しいって? あら、そお? ならばそのお気持、もっと大きな声でおっしゃってくださいませ。また化けてでも、出てまいりますゆえ。

(「あとがきにかえて」より)

アガワ対談傑作選 追悼編 「聞く力」文庫3
阿川佐和子・著

定価:本体880円+税 発売日:2016年01月04日

詳しい内容はこちら

アガワ随筆傑作選 「聞く力」文庫2
阿川佐和子・著

定価:本体580円+税 発売日:2015年12月04日

詳しい内容はこちら

アガワ対談傑作選 「聞く力」文庫1
阿川佐和子・著

定価:本体710円+税 発売日:2015年11月10日

詳しい内容はこちら


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