「東京するめクラブ」というのは春樹さんによる命名らしい。このネーミングについて彼はこんな風に語っている。
「たいしたもんじゃないですけど、くちゃくちゃ噛んでいるうちに、なんかそれなりの味が出てくるのでは……」
と、いうことだ。春樹さんはこういったネーミングが実に上手だ。それは彼の本の題名をみてもわかることだろう。
因(ちなみ)にぼくの酒の肴のベスト1は“するめ”である(関係ないですね)。
「東京するめクラブ」の旅は『地球のはぐれ方』という題名で本になり発刊されるわけだが、三人の隊員は実にさまざまなはぐれ方を展開しており、そのはぐれ先でのリアクションに笑わされる。笑わされはするのだが、はぐれ先は、実はそれはいつか自分自身のなかでも出会ったような光景であったりしてちょっと背なかに汗が流れる。
三人のはぐれ旅は名古屋からはじまるわけだが、そのタイトルが「魔都、名古屋に挑む」である。なるほど、名古屋は魔都であったか、と、おもうのだが、何を隠そう(隠す必要は何もないのだが)ぼくは東京生れでありながら、中日ドラゴンズの大ファンである。かつては名古屋球場、今はナゴヤドームに時々出かけているが、この本を読んで、改めて名古屋の魔都なるところを認識した次第である。恥かしながら未だにしゃちほこ丼も抹茶小倉スパゲティも食べていない。
また余談で申しわけないが、名古屋には「ピカ一」というドラゴンズファンの集る中華屋さん(中華ばかりではないが)があって凄まじい。店内は中日ドラゴンズ一色である。春樹さんなど連れていったら十四秒くらいで卒倒するにちがいない。
ぼくは『地球のはぐれ方』に、三名の隊員の似顔絵(なんて書いていいのかな)を描いている。春樹さんの顔はよく描いているが、都築、吉本隊員の顔ははじめて描いた。ぼくは似顔絵の名人、和田誠さんの本の、「似てない似顔絵」という項に登場するほどに似顔絵が下手である。それでも詩心を持って描けば、それとなく感じは出るものだ。ぼくは若い女性ファンに「村上春樹さんの顔描いてください」などとよく頼まれる。何でぼくの本に春樹さんの顔を描かなければいけないのかとおもうが、まあそれほど世の中には春樹ファンが多いということだろう。とにかく詩心を持ってぼくの似顔絵を見てください。
隊員三名が、それぞれの持ち場で文章を担当しているのもこの本の興味深いところだ。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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