2015.03.10 インタビュー・対談

何かに囚われた人々の姿を容赦なく描く超異色短編集

聞き手: 「本の話」編集部

『奴隷小説』 (桐野夏生 著)

突然兵士に襲われ、泥に囲まれた島に囚われてしまった女子高生たち(『泥』)、収容所で死と隣り合わせの鐘突き番にさせられた少年(『山羊の目は空を青く映すか』)……。人間社会に不意に現れる様々な「奴隷状態」を描く短編集『奴隷小説』をこの度上梓した桐野夏生さん。超異色のテーマ性を持つ本作の背景を伺います。

――この短編集には時代や場所も異なる7つの物語が収録されていますが、それぞれの物語の登場人物は何らかの物事や状況に囚われている「奴隷状態」であることが共通しています。このテーマをそれぞれの物語に通底させることは最初から意識されていたことなのでしょうか。

桐野 いえ、特別に意識はしていませんでした。この短編集に『ただセックスがしたいだけ』を収録することを考えていた時、ある編集者の方から「今回は奴隷の小説集ですね」ということを言われ、初めてそのことを意識しました。考えてみると『ただセックスがしたいだけ』『山羊の目は空を青く映すか』は強制収容所のようなところが舞台になっていて、確かにある種の奴隷状態を描いていました。ちょうどその頃は長編小説の『ポリティコン』を書いていた時期で、北朝鮮と中国の国境に行ったり、北朝鮮の強制収容所のことをよく取材していたので、その影響があったと思います。

――日本の戦国時代にある事情でゴアに渡った男を描いた『告白』、娘の自殺という悲しい記憶に囚われる女性が登場する『REAL』、地下アイドルに憧れる女の子とその母親を描く『神様男』など、モチーフや状況、さらには発表の時期も異なっているのに、奴隷の状態ということだけが絶妙な共通性を示しているのがとても興味深かったです。

桐野 その3つの作品は全く独立した意識で書いたもので、やはり奴隷的なことは全く考えていませんでした。でも作品を並べてみると、通底するテーマとしてそのことが浮かび上がってきて、自分でもとても面白かったです。『告白』のように物理的な奴隷の状態にあるのか、それとも『REAL』のように心の檻のようなものに閉じ込められているのか――。『告白』を書いたのはもう10年前(2005年)のことになりますが、その頃から無意識に何かに囚われている人間や状況を書きたかったのでしょうね。

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奴隷小説
桐野夏生・著

定価:本体1,200円+税 発売日:2015年01月30日

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