インタビューほか

何かに囚われた人々の姿を容赦なく描く超異色短編集

「本の話」編集部

『奴隷小説』 (桐野夏生 著)

突然兵士に襲われ、泥に囲まれた島に囚われてしまった女子高生たち(『泥』)、収容所で死と隣り合わせの鐘突き番にさせられた少年(『山羊の目は空を青く映すか』)……。人間社会に不意に現れる様々な「奴隷状態」を描く短編集『奴隷小説』をこの度上梓した桐野夏生さん。超異色のテーマ性を持つ本作の背景を伺います。

――土俗的な習俗が残る村に生きる少女を描いた『雀』と、突然原理主義者らしき兵士に襲われた女子高生たちを描く『泥』も非常に印象的でした。特に『泥』は中東で現実に起きた事件との共時性と、女性が生きることの困難がむき出しの形で表現されていて、現代の日本が舞台ではないのに、同じようなことが今ここで起きてもまったく不思議ではないと強く想起させられました。

桐野 現代はITが発達して、誰もが簡単に情報を得られる時代なのに、一方でボコ・ハラムが少女たちを誘拐・監禁したり、イスラム国が捕虜を斬首したりと、まるで中世の刑罰のような事件が実際に起きています。日本でも高度成長期以降には考えられなかった女性や子供の貧困問題が顕在化してきている。そんな「こんなことは起きないだろう」ということを物語にするには、ディテールを書きこむ長編ではなく、より極端な、むき出しの形をとった短編小説の方が描きやすいですね。それが私にとっての「短編小説」という仕事なのだと思います。

――本作は短編集としては『アンボス・ムンドス』(文春文庫)以来の、約10年ぶりのものとなります。今後はどのような短編を書かれるのでしょうか。

桐野 私の仕事は基本的に長編小説の執筆なので、短編はその合間、もしくは並行して書くことになるので、最初からテーマありきのコンセプチュアルな短編を書いてゆく、ということにはならないと思いますね。でも今のこの日本で生きている私が書くことですから、当然そこで考え、感じたことを照射するものには必ずなると思います。次の短編集が出るのがいつになるかはわかりませんが(笑)、作品を編むときに何らかの通底するテーマが浮かび上がってくるのか、それとも「何が出てくるかわからない」ものになるのか、自分でも今から関心を持っています。

奴隷小説
桐野夏生・著

定価:本体1,200円+税 発売日:2015年01月30日

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