書評

和田 誠さんとの二人展が本になった

文: 安西 水丸,和田 誠

『パートナーズ——ライバルともだち/ことわざバトル』(安西 水丸、和田 誠 著)

  子供の頃から絵を描くことが楽しい遊びだった。中学生の時、先生が、あなたは絵が好きだから美術大学に進んでみたらどうかと、それとなく言った。この言葉には正直驚いた。ぼくは大学は勉強するところだとおもっていたのだ。大学で絵が描けるなどと、これは衝撃的なできごとだった。

  絵を描くことがたまらなく好きなのに、どういうわけか画家になろうなどとはおもったことがなかった。画家の伝記を読んだ時の薄気味悪さは今でもぼくのなかにある。

  高校生になって、美術大学のグラフィックデザイン科を目ざしてデッサン教室に通いはじめた。絵を描くことは好きだが、石膏(せっこう)デッサンほどつまらないものはなかった。

  石膏デッサンをやっていると先生が廻って来て言った。

  「うん、正面はよく描けている。うん、しかし裏が描けていないな」

  裏をどうやって描くのかとおもった。

  ある日デッサン教室の売店で『グラフィックエレメント』という本を買った。その本はイラストレーションを特集していた。

  家に帰ってむさぼるようにしてページをめくったのだが、あるページにジャズクワルテットの「MJQ」を描いたイラストレーションがあった。実に恰好いいテクニックで描かれたその作者の名前は和田誠とあった。ぼくは一瞬にして魅了された。

  因みにぼくがはじめて「イラストレーション」なる文字を見たのは、詩人萩原朔太郎の『青猫』だった。朔太郎は、挿絵という漢字の横に小さく「イラストレイション」とルビを振っていたのだ。

  和田誠さんはぼくの憧れの人になった。これはぼくばかりでなく、当時デザインやイラストレーターを目ざしていた高校生はみんな和田病にかかっていたらしい。ぼくらの世代の多くがグラフィックデザインに進まずイラストレーターになったのも、当時の人気イラストレーター、和田誠さんや横尾忠則さん、宇野亜喜良さんの影響といっていいだろう。

パートナーズ
安西 水丸・著 , 和田 誠・著

定価:3800円(税込)

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