- 2010.04.20
- インタビュー・対談
島田荘司 × 寵物先生 (ミスターペッツ)
アジアから現れた本格ミステリーの超新星
「本の話」編集部
『虚擬街頭漂流記』 (寵物先生(ミスターペッツ) 著/玉田誠 訳)
出典 : #本の話
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
台湾ミステリーの現状
島田 台湾のミステリー界は今、どんな状況ですか?
寵物 以前は社会派のものが多かったのですが、海外の作品が次々に翻訳され、二〇〇四年頃から既晴や藍霄(ランシャオ)などといった作家たちが本格ミステリーを熱く語り、創作するようになったので、現在の創作者の比率から見ると、本格ミステリーが一番多いと思います。もっとも台湾推理作家協会の会員は十七名で、実作者はその半分くらい、それも他に仕事を持っている人ばかりですが。
島田 中国と影響しあうということはありますか?
寵物 影響しあうというよりは、中国の読者が一方的に台湾の本を買うという状況です。中国人にとって台湾の本は高価なのですが、印刷がきれいだし、検閲や削除をされていない本を読みたければ台湾の本を買うしかないので、台湾のホームページなどで、出版物も細かくチェックしているようです。
島田 『占星術殺人事件』が北京で出版された時、発売直後から毎週増刷されるほどよく買われたそうですが、これも、台湾からの情報が事前に入っていたからでしょうね。復旦大学や北京大学で講演した時も、熱狂的に迎えられました。
とはいえ、中国の本格ミステリー界はまだ「館もの」のようなコード型本格が主流で、そういうミステリー系の作家たちも、まだ二十人に満たないと聞きましたが。
寵物 今の中国は、六、七年前の台湾に似ていると思います。台湾でも最初はアメリカや日本から入ってきた本格ミステリーに影響されて、「館もの」から始める創作者が多かったですから。でも中国の読者たちは、コード型本格ミステリー以外にも面白い推理小説があると気づきはじめていると思いますよ。
島田 それでは中国のミステリーファンや創作者は、そう遠くない将来、台湾に追いついてくるということですね。
寵物 本気でミステリーを書きたい人が出てくれば、すぐに追い抜かれるでしょう。何しろ人口がすごいですから(笑)。
島田 確かに台湾二千三百万、中国は十三億四千万人ですからね。その中には必ず天才が潜んでいることでしょう。もちろん、台湾にも天才は必ずいると思いますが……。
寵物 いてほしいものです(笑)。
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