本書『源内なかま講』は、タイトルのとおり、平賀源内とその仲間たちを主人公とした連作短篇集だが、その「仲間たち」の略歴がまず虚々実々、なみの時代小説でないことをうかがわせて不敵。ストーリーの紹介を兼ねるかたちで、ちょっと書き出してみよう。
平賀源内
蘭学者・戯作者。二十年以上もむかし「源内焼」という三彩釉の陶磁器を開発したことがある。いまや珍品となり、江戸で一個いくらの高値を呼んでいるものだが、そのお宝が、どうやら源内の生まれ故郷である讃岐国志度(しど)の地には一千個もねむっているらしいというのが本書の主題。時価にして二万両以上、手に入れられれば大金持ち。(5)。
蘭陽
役者くずれ。男だが女より美しい。両国の料亭の支配人になる予定だったが、源内焼の、というか二万両の話に目がくらみ、志度へ行こうと言いはじめる。(4)。
春朗
浮世絵師。若き日の葛飾北斎。しぶしぶ(?)蘭陽や源内の志度ゆきに同行する。 蘭陽との会話はつねに軽妙、ときどき伝法。源内の前では少々おとなしいのは、ある いは親子ほどの年齢差ゆえか。(3)。
嘉兵衛
淡路島の船乗り。源内一行の乗った船の舵取りをつとめる。将来の夢は千五百石船 を手に入れて蝦夷地へわたり、にしんや蟹で大もうけすること。
仙波(せんば)一之進
北町奉行所吟味方筆頭与力。源内を潜伏生活から救い出した立役者だが、本書ではほぼ出番なし。(1)。
おこう
仙波一之進の妻。もと柳橋の芸者。するどい直感のもちぬしだが、本書ではほぼ出番なし。(2)。
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