冠婚葬祭にかんする情報として今求められているのは、たんなるしきたりについての知識ではない。より本質的で、答えを見出すのが難しいことについて、人々は情報を求めるようになってきた。
もちろん、そうした冠婚葬祭にまつわる難問は、インターネット上の相談コーナーにも寄せられている。ところが、回答者の意見はまちまちで、質問者が納得できる回答が得られるとは限らない。多種多様な意見に接して、かえって混乱が増すことにもなりかねない。
今回私が冠婚葬祭にかんする新しい本を出そうと考えたのも、どういったしきたりに従えばいいのか、その点について大いに困っている人たちが少なくないと考えたからだ。
その際に、実際皆がどういったことに困っているのか、編集者に質問を集めてもらった。その数100を超え、そこから重複するものなどを落としてちょうど100の問いにまとめたが、答えるのが容易でない難問が少なくなかった。
「正社員ではないので婚約指輪が買えない」
「結婚式に呼べる友達がいない」
「離婚した相手の家族とどう付き合ったらいいのか」
「葬儀はどこまで簡略化できるのか」
「一人っ子は墓をどう守っていくべきなのか」
こういった問いは、当然予想されたものだが、「ペット葬に呼ばれたときのマナーは」とか、「マンション住まいなので乳歯はどこへ投げたらいいのか」、「亡くなった愛する夫の骨をかじる母をどうしたらいいのか」などは、実際に質問が集まるまでまったく予想していないものだった。
少子高齢化だけではなく、生涯未婚者や離婚の増加、経済事情の悪化などが冠婚葬祭のしきたりにも影を落としている。しきたりについて知りたいというよりも、一般的なしきたりに従えない、あるいは従いたくないときにどうしたらいいのかという、より解決の難しい質問が多かった。どう答えていいのか頭を抱えるようなものも少なくなかった。
私が実際にどう答えたかは、『冠婚葬祭でモメる100の理由』を読んでいただくしかないが、どの質問に対しても、正面から回答することを一番にこころがけた。あわせて、どうしてそういったしきたりが生まれてきたのかを説明し、現状に照らし合わせて、今必要なしきたりなのかどうかについても検討を加えた。100の難問に取り組んで、改めて冠婚葬祭の難しさを痛感している次第である。
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