インタビューほか

『CHANGE』に見る理想の総理像

田崎 史郎

『政治家失格』 (田崎史郎 著)

田崎    だからこそ、彼らの能力にプラスして、『CHANGE』で書かれるような感性と姿勢も必要だと書いたのです(苦笑)。私が強調したかったのは、政治はやはり「人」だということです。ともすれば政治の劣化の原因を、システムに求めがちです。でも、どうでしょう。同じ環境、制度下に二人の政治家がいて、同じ場面に遭遇します。その二人は同じ決断をするでしょうか。むしろ、違った判断をして行動するケースがはるかに多いはずです。今、政治家のプロとしての能力が下がっていることに危機を感じているのです。

福田    朝倉啓太総理を、権謀術数を駆使して追い落とそうとするのが、寺尾 聰さん扮する神林官房長官です。彼こそは、まさにプロ中のプロの政治家です。神林の企みについては、田崎さんにいろいろ案を出していただきました。神林が内閣に汚職疑惑議員を仕込んでおいて、いざというときに、疑惑をはじけさせて内閣を追い込むことはできるだろうかと相談した時は、「やろうと思えばできる」と。また、「こういう人物にとって、いちばん、こたえるのはどういうことですか」と質問したら、「人が自分の周りから離れていくことだ」と。さすが多くの政治家の栄枯盛衰を見てきた方の意見だと思いました。それで、秘書の美山理香(深津絵里)を、朝倉のもとから去らせました。しかし神林は、この国をどうしたいのかというビジョンを、一度たりとも語らないのです。

田崎    政治には技術も必要ですが、しかし本当は、福田さんがドラマにこめられたメッセージである「国民の心がわかる」の一点こそが最も重要です。

福田    おそらくこれからも、国民もマスコミも、変わらないと思います。田中真紀子さんに熱狂したかと思えば、郵政解散の「刺客」を面白がったりもする。だから、やはり政治家が変わらなければならないのだと思います。しかし、「民主党三銃士」のような期待の若手もいるのを知るとほっとしますが、彼らの成長を待つと思うと、気が遠くなりますね。

田崎   下級武士が日本を動かす存在にまでなるという坂本龍馬は、『CHANGE』の朝倉に似ていますね。

福田    今、黒船が来る一連の動きを書いているのですが、痛感するのは、幕府の対応が、常に後手後手だということです。黒船の情報がオランダ経由で入っているのに、「来る」「来ない」で議論している。黒船が帰ったら、「また来る」「もう来ない」で議論している。幕府に政治のスピード感と対応能力がない。だから黒船来航によって日本人が気づいたのは、幕府はもうダメだということだったのです。

田崎    麻生自民と小沢民主の二者択一でなく、今の日本の政治も、根本から変えなくてはいけないのかもしれません。

政治家失格
田崎 史郎・著

定価:840円(税込)

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