自衛隊機の墜落事故から始まった一連の事件をスリリングに描いた『推定脅威』で第21回松本清張賞を受賞した未須本有生さん。元技術者の経験を活かしたリアルすぎる描写が高い支持を集め、受賞作はスマッシュヒット。待望の第二作は、前回よりもさらに戦闘機設計の内幕に迫るものとなった。
「日本にはものをつくっている側の人間の話というのがほとんどない、ということはかねてから思っていました。戦闘機が出てくる小説であっても、それを戦争で使うとか、自衛隊が使うとか、すごいテクニックを持った誰かが使うとか、あくまで視点はユーザー側です。
しかし、優れたマシンがそこに存在するということは、それを創った誰かがいるということ。誰かがそのマシンをつくることを提案し、それを具現化するための技術が培われ、その技術を活かすためにさらにまた誰かが動き……と気の遠くなるほどの過程があり、多くの人が関わっています。現在のフィクション小説では、その過程がすべて抜けて、突然最新型の何かがポンと出てくる。技術者としては、そこにやっぱり違和感がありました」
ただものづくりの現場を描いた、というだけではない。著者は「大手メーカー勤務」という経歴を活かし、防衛省からの発注を勝ち取る過程、ライバル企業との駆け引きや官民のやりとりを細部まで文章にしている。
「防衛省とのやりとりをメーカー側から書く人はこれまでいなかったのではないでしょうか……。まず会社にいる間は守秘義務がありますし、なにより忙しいので書けない。さらに製造業では終身雇用の体質がまだ生きているので、退職したあと他の仕事を新たに始める人は少ないですから。私みたいに途中で会社を辞めて、生活に困窮し、なんとか自分の持てる札でなんかこう、新しいことをやれないかと思ったときに、やっとその経験を文章にする気になるわけです(笑)」
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