序文で、松浦弥太郎さんが、ミナのセーターについて、こんな具体的な想像を書いている。
ブリュッセルとはいわずとも、サンフランシスコの一階が古本屋で、上がホテルになっている安宿あたりで、1週間くらい寝ても覚めても着たままで過ごしてみたら、いい感じに毛玉ができあがって、自分の体のかたちに沿うように伸び切って、ドーナツのカスや、芝生の芝がいつまでもくっついているような感じになってさ、いいと思うのです。(9P)
名文だ。これがまさに、ミナ ペルホネンの魅力であり、服を愛する、というこ とだと思う。流行に左右されない服を、長く大事に着る。一緒に年を取っていく。
今回、私のもとにこの解説の依頼があったときに、担当の編集者から「辻村さんがミナを着ていると何人かから聞いたので」と言われた。他にもきっとミナを愛し、書きたい、と思う人がたくさんいるであろう中、お声をかけてくださったことに感謝しながら、今、私は「yuki-no-hi」のワンピースを着て、この文章を書いている。
ミナのファブリックが紹介されているとき、私はまず、そのファブリック名を見る。ちょっとわくわくしながら、とりあえず、名前だけを見る。「go!(ゴー!)」、「friend(フレンド)」、「float(フロート)」、「skyful(スカイフル)」、「merci(メルシー)」、「start(スタート)」、「alive(アライヴ)」……。どの柄にどんな名前がつけられているのかを見ると、そこに皆川さんが向けた目線が見えてきて、「なるほどなぁ」と勝手に、そこに物語を読み取って頷く。この瞬間が大好きだというのが、私がミナ ペルホネンを着たいと思う大きな理由の一つかもしれない。その後、どうしてそう名付けられたのかの説明を読むと、私が思った通りである場合もあるし、まったく違っているときもある。だけど、違っているとそのギャップもまた楽しく、それだけで、人にそのことを話したくなる。
ひとつひとつのデザインの向こうに、本書に書かれた皆川さんの言葉を想像しながら、100年先までのミナ ペルホネンを追いかけられることを、同時代に生きるファンの一人として光栄に思う。
これからも、とても楽しみにしている。
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