(3)淑女? 悪女? オトコの理想像は?
古き良き日本のオトコたちの恋の相手はやはり古き良きオンナたち。オトコが思い描くオンナの理想像を知る上でも“司馬本”はおおいに活用できそうだ。
大河ドラマの原作にもなった『功名が辻』(文春文庫)は、凡人の夫を一国の主へと仕立てた山内一豊の妻・千代が主人公。聡明な千代はまさに良妻賢母の鑑。面白い人生を求め遠国の武士に嫁いだ『夏草の賦』の菜々も千代とは若干タイプは違うものの、自ら考えて自ら動くたくましさが共通点だ。
一方、恋愛小説のような雰囲気をまとった作品には一途な女性たちが登場する。すれ違う男女の心の機微を言い当てたラストシーンが切ない『一夜官女』や、国籍の違う男女の恋を壮大なスケールで描いた『韃靼疾風録』のヒロインは、かよわいながらもその思いの強さはオトコをたじろがせるほど。
映画『007』シリーズのボンド・ガールのように艶っぽいシーンのためだけに登場する女性も少なくないが、いずれにしても凜とした潔さのある女性が理想のようだ。
『一夜官女』
戦国時代の名もなき男女の姿を時に妖しく、時に滑稽に描いた短編集。人妻でありながら一夜の恋に身を焦がす女性の切なさに胸打たれる表題作ほか、妻の浪費を賄おうと武功を重ね、大金持ちになっていく武将を主人公にした「女は遊べ物語」など6編。(中公文庫)
『韃靼疾風録』
政権が徳川へ変わろうとしていた17世紀。九州平戸島に漂着した韃靼公主の姫君・アビアに出会った下級武士・桂庄助は、彼女を祖国に送るべく海を渡る。言葉や習慣の違いを乗り越え結ばれた二人の恋を主軸に東アジアの覇権の興亡を描いた。(中公文庫 上下)
『夏草の賦』
織田信長の本拠地・岐阜城下一の美女と噂されながら、四国土佐の片田舎に嫁ぐことを自ら決めた菜々。風変わりな姫の夫となった長曾我部元親は、土佐一国を制するやいなや四国全土を席巻。信長や秀吉をも脅かす時代の風雲児となっていく。(文春文庫 上下)
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