日々、多くの決断を迫られる企業の社長や組織のリーダーは、どんな本に出会い、影響を受けてきたのか。新連載「リーダーの愛読書」では、厳しい競争を勝ち抜いてきたトップビジネスマンの読書遍歴をたどり、その思考法に迫る。 初回は、特典ポイントの有効期限を撤廃した“永久不滅ポイント”など、クレジットカード業界に変革を起こしてきた株式会社クレディセゾンの林野宏社長に話を聞いた。
私の持論は、ビジネスマンには感性が必要だ、ということです。
いかに同業他社に勝ち続けていくか、という戦略を立てるには頭を使わないとダメ。一つしかない正解を導くのが得意な秀才では無理なんです。そのための感性や知恵をどうやって磨くか。ポイントは読書や音楽、遊びに夢中になれるかどうか。“夢中力”があれば、ビジネスの能力もぐんぐん伸びる。会社が与えたビジネスの課題への解決策を出すには、“知の泉”が必要。これを深めるのには読書が最適なんです。
ただ、感性を鍛えるには適齢期があって、やっぱり若い時がいい。子供を塾なんかに行かしているだけじゃダメ。私の場合、父親が本が好きで、自宅に本が積まれた物置があった。子供の時は『ファーブル昆虫記』などに夢中になって、中学生からコナン・ドイルやエドガー・アラン・ポーの推理小説に夢中になりました。
高校一年生のときに、松本清張の『点と線』が出版されたんです。休日の昼間に、寝転がって読み始めて、「これは日本の推理小説の革命だ」と衝撃を受けました。いわゆる、“空白の四分間”が謎を呼ぶ傑作ミステリー。東京駅の十三番線ホームから、十五番線の「あさかぜ」が見えるわずかな時間。これを題材にして、壮大なストーリーを組み立てていく。時刻表のトリックかもしれないですが、この小説は、松本清張という作家が、日本全国に足を運んで作り上げた「知の泉」から生まれたからこそ、面白いんです。
この後、清張作品の魅力に取りつかれて、貸本屋さんに通ってほぼ全部読みました。少し脱線しますが、今の日本は私の子供時代よりはるかに豊かであるにもかかわらず、無料で提供されるものが多く、図書館では発刊間もない本を読むことができます。無料の提供は、そのメリットより、作家ら創造する側を駄目にしてしまう社会的な毒の方が大きい。本はお金を払って読むべきです。
井上靖さんの『蒼き狼』に出会ったのは高校三年生のころ。シルクロードに憧れを抱いていて、いつか行ってみたいと思っていた。舞台はモンゴル高原からシルクロードの終着駅サマルカンド。憧れの場所が描かれていた小説に、男のロマンを感じて、むさぼるように読みました。
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『烏の緑羽』阿部智里・著
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