私は人類で最も偉大なリーダーはチンギス・ハーンだと思っています。父親が毒殺され、全てを失い、ゼロから人類史上最大のモンゴル帝国を作り上げた。『蒼き狼』には、実力主義の世の中を勝ち上がっていった偉大なリーダーの人生が描かれている。十三世紀、モンゴルの遊牧民が、馬という交通手段だけで中国、中央アジアからヨーロッパまで、ユーラシア大陸全域の帝国を作り上げた。交通システムも整備し、貿易面でも繁栄させたのは、本当にすごいことです。
大学を出て、西武百貨店に入社し、書籍売り場に予約をして初版を手に入れたのが三島由紀夫の『豊饒の海』四部作です。遺作となったこの小説は、日本語を駆使して、文章を芸術まで昇華させた作品だと思います。二〇一〇年の「文字・活字文化の日」にちなんだ朗読会で、私が選んだ一冊として、第四巻『天人五衰』のラストシーンを朗読したことがあります。株主総会の前でも練習しないのに、この時は練習しましたね(笑)。
松枝清顕(まつがえきよあき)が愛した綾倉聡子(あやくらさとこ)が出家した奈良の月修寺に、年老いた清顕の親友本多繁邦(ほんだしげくに)が訪ねていく場面です。
《庭は夏の日ざかりの日を浴びてしんとしている。……》
そこは、かつて愛し合った男女の記憶さえ失われた世界。虚無感を表現するのに、対照的な夏の庭を描いた。私はこのことに深く感動しました。やっぱり、感動できる感性を持ち続けることが大事なんですね。読書をしても、通り過ぎただけではダメ。それでは本に読まれたことになる。読書にのめり込んで没頭すれば、違う世界が広がっている。こういう感性を得られれば、ビジネスでも人と違うアイデアを出せると思います。
忙しくて読む時間がないという人もいるけれど、それは違います。人間の集中力は長い時間持たない。仕事も集中して二時間もやれば、あとは惰性で流れている時間でしょう。短時間で結果を出して、あとは自分のために使えばいい。忙しいなんて言うのは、時間を作り出す能力がないということなんです。
お勧めの3冊
・『点と線―長篇ミステリー傑作選』(松本清張 著) 文春文庫 740円+税
・『蒼き狼』 (井上靖 著) 新潮文庫 670円+税
・『春の雪 豊饒の海(一)』『奔馬 豊饒の海(二)』『暁の寺 豊饒の海(三)』『天人五衰 豊饒の海(四)』 (三島由紀夫 著) 新潮文庫 710円+税ほか
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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