- 2016.07.06
- インタビュー・対談
新刊発売記念 本にまつわる四方山話 ジェーン・スー×春日太一
『女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。』 (ジェーン・スー 著)/『あかんやつら 東映京都撮影所血風録』 (春日太一 著)
5月28日に新刊『女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。』が発売となったジェーン・スーさん。6月10日に『あかんやつら 東映京都撮影所血風録』が文庫化された春日太一さん。ラジオや雑誌のコラムで活躍中のお2人が、おたがいにオススメの本をあげて語る、本についてのあれこれ。
喋っているものを自分で書き起こしている感覚です。
春日 ジェーン・スーさんとはお互いにTBSラジオに出ている縁で共通の知り合いも多くて。いつもぽっと口にするフレーズが見事だなと思っています。しかも文章も喋っている時と同じクオリティですよね。
スー 私は喋っているものを自分で書き起こしている感覚です。でも読むのは苦手で、時間がかかります。
春日 僕は読むスピードだけははやくて。以前映画のプロデューサーに「これ読んどいて」と10冊くらい本を渡されて、1日で読んで要約するバイトをやっていました。とにかく面で読む「面読」です。
スー 今回、春日さんの新刊もオススメ本も分厚くて、今までの人生で一番集中的に本を読みましたよ。
春日 すみません(笑)。
スー でも面白かったです。『4522敗の記憶』は横浜DeNAベイスターズの記録ですが、夢を持つ人たちが頑張って結果を出すのに、なかなか点が線にならない。それをずっと繰り返してきたんだと知りました。
春日 おっしゃる通り。僕もずっとベイスターズを応援していますが、ある種の無間地獄です。
スー 前にツイッターで春日さんに、ベイスターズのファンって、「バタードワイフ」(英語でDVを受けている奥さんのこと)みたいですねって言ったんですよね。
春日 そう。いきなり本質をおっしゃるので驚きました。だったらもう、DVの全貌を知ってもらおうと思って今日のオススメ本にしたんです。この本は我々にとって聖書の『出エジプト記』のようなものですから。
スー エジプトから出られてないじゃないですか。
春日 海が割れなくて毎回エジプトに戻されてばかりで……。
スー もうエンターテインメント型DVですよ。『4522敗の記憶』も『あかんやつら』も、今までひも解かれていなかったものを、取材して、資料にあたって、きちんとまとめた本ですよね。『あかんやつら』は映画人たちの話ですが、実はうちの母親は映画雑誌の編集者だったんです。淀川長治さんが編集長で、小森のおばちゃまが先輩の時もあって。
春日 え、すごいですね。
スー なのに私は映画に興味がなくて、気づいたら親が死んでいたので、当時の話を一切知らないんです。今回読ませていただいて、日本の映画産業ってこんな突貫工事みたいなところから始まったんだと知りました。びっくりしたのは、原始時代から始まってまだ石器時代のイメージなのに、山城新伍とか高倉健といった知ってる名前が出てくるところ。「あの作品てこんなに整備されてない状態で撮ってたの?」っていう。
春日 そうですね。
スー 太秦撮影所の年代記かなと思ったら、全然違ったので面白かった。
春日 最初そういう書き方をしたら、めまぐるしすぎて分かりにくくて。それで一人ひとりの人生を追いかける形にしました。今回、文庫にする際に女性スタッフの話を加えました。最初期の『きけ、わだつみの声』の現場から紅一点で入っていたスクリプターの女性が、どうやってこの世界で生き抜いたかって話を新たに加えています。
あかんやつら
発売日:2016年12月09日