――カツ代さんの書かれた料理本は230冊以上だそうですね。
本田 170冊までは、きっちりカウントしていたのですが、共著なども多く、それ以降は正確な数を把握するのをあきらめました(笑)。
その中でこの本は、ひとり暮らしの視点から書かれていることが特徴だと思います。子どもたちが独立し、初めてひとり暮らしをするようになり、自分のために作るごはんの楽しさに目覚めたときに作られた本なので。
「発見! ひとりすき焼きって、美味しいの知ってた?」と嬉しそうにしていました。主婦って、すき焼きをしても家族の世話で忙しく、自分がゆっくり食べることはできませんよね。「ひとりすき焼き」だったら、誰からも邪魔されず自分のペースで美味しく味わいながら食べられる。ひとり分でも太い葱一本を刻み、しっかり焼き目をつけるのがコツ。
「もやしあんかけラーメン」も、おすすめです。インスタントラーメンで、もやし一袋まるごと美味しく食べられちゃう。今回、作ってみて、よくこんなの思いついたものだと感心しました。もやしにスープの素半分と砂糖少しを混ぜてあんかけにするのがコツなんです。
――表紙のオムライスもレシピどおり作ったら失敗なくできました。
本田 ケチャップ味のチキンライスが実に簡単に美味しくできる。こんなやり方は、他にあまりないと思います。鶏肉をあらかじめ茹でておくのがコツです。もう一つの大切なコツは、ぜひ本で読んでください(笑)。
そう、プロの料理人って「コツは見て盗め」と言われ、何も教えてくれないことが多いと聞きます。でも、小林は入ったその日からコツを教えてくれる人でした。「美味しい料理に修業年数はいらない。コツと技術が大事」というのが持論でしたね。
――結婚した当初、初めて作った味噌汁が、お湯に味噌を溶いただけだったというのは、カツ代神話になっていますが。
本田 そうなんです。わからないところがあると、しょっちゅう大阪のお母さんに電話して聞いていたそうです。お母さんが料理上手で、本人も「美味しい」ということに関する感度が非常に高かった。理想とする味のレベルが高く、研究熱心なので、あそこまでいったのだと思います。とにかく、いろいろなものを読んでいました。雑誌や新聞からの切り抜きも尋常な量ではなく、今も一部屋分の段ボール箱が残っています。その何でもない一行から、料理のヒントや発見が生まれるんです。
仕事のない日に喫茶店で大好きだったコーヒーを飲みながら、次はどんな面白いことをしようかと、目を輝かせていた人だったので、92歳まで生きたら、どのような展開があったのか。それを見られないのが残念でなりません。
-
『赤毛のアン論』松本侑子・著
ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。
応募期間 2024/11/20~2024/11/28 賞品 『赤毛のアン論』松本侑子・著 5名様 ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。