人様の前に出しても恥ずかしくない財布が欲しいと思いはじめ、それってつまりそこそこちゃんとしたブランドものってことで、わたしはようやく件(くだん)の友人と同じ立場に立ったわけである。きっと彼女も、社会人として恥ずかしくない財布を求めてヴィトンに至ったのだろう。ああ友よ、いまこそ君と一緒にお買い物がしたい……と思いながら、わたしは一人お伊勢丹を彷徨(さまよ)った。
お伊勢丹とは新宿三丁目にある、チェックの紙袋で有名な百貨店、伊勢丹新宿店のこと。不況で経営難に陥るデパートの様子ばかりを見てきたわたしにとって、お伊勢丹は百貨店に対する畏敬と憧憬をいまもかき立ててくれる特別な場所なのだ。
さて、7年の時を経てようやく社会人のスタートラインに立ったわたしが選んだのは、プラダのショーケースに上品に鎮座していた、ピンクベージュの長財布である。硬くてしっかりしていて、なにより高級な革ならではのイイ匂いがする! 買ってしばらくは暇さえあれば、財布に鼻を当ててスーハースーハー、シンナーみたいに吸っていた。
それにしても、約9万円とは相当高額である。財布ってこんなに高いものなのかとビックリした。そして高揚した気分で店を出るなり、心中こうつぶやいたのだった。
「仕事がんばろう……」
人生初の本格的なブランドものを買うにあたって、なぜ迷わずプラダを選んだのか。そこに小沢健二『痛快ウキウキ通り』の歌詞からの影響は否定できまい。この曲によってある世代がプラダに抱くイメージに紗(しゃ)がかかったことは間違いないと思う。かと言ってオザケンがプラダからロイヤリティをもらったりはしていないはず。本書に出てくるアイテムも当然ながらすべて自腹で購入しております!
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なんでもない少しだけ異質な日常に潜むもの
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みんなと私の「おいしい!!」のため
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美味しいワインに理屈は不要です
2008.12.20書評
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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