――本書では、進化論やヘッケルの反復説にも触れています。
ヒトはゆるやかに進化を辿って成長する、というヘッケルの考え方には、大きなヒントが隠されています。残念ながら本家の生物学の分野で、この考え方は否定されてしまいました。しかし一方で、フロイトやユングを始め、錚々たる異分野の学者たちが、ヘッケルの考えを吟味してきた歴史があるのです。また近年、遺伝子の解明が進み、進化と発達をめぐるヘッケルの考察が再び見直される機運があります。

――本書ではそうした知見に基づいて、本当の早期教育とは何か、についても具体的に論じています。
脳科学というより、脳の進化から教育を考えるべきなのです。そうすれば、幼いころにどんな環境が必要か、おのずとわかるでしょう。
たとえば、ハイハイの時期を飛ばしてつかまり立ちをさせるのは決して良いことではありません。しっかりとハイハイさせることが足の親指を刺激し、脳神経の発達を促します。
早く与えると、かえって害になるものもあるのです。人は生まれてくる時、一度進化の原点に立ち戻る、という視点が、今後ますます必要になってくるでしょう。