- 2014.11.13
- インタビュー・対談
「生きる力」を育くむ
ヒントは、進化の順番にあり
「本の話」編集部
『アインシュタインの逆オメガ 脳の進化から教育を考える』 (小泉英明 著)
ジャンル :
#ノンフィクション
知的創造性や意欲を育てるには、どうすれば良いのでしょうか。カギは進化の順にあります。脳の測定器「光トポグラフィ」を開発した脳科学の第一人者が、脳の進化から幼児期にふさわしい教育を考えた野心作です。
――まず、タイトルの「アインシュタインの逆オメガ」とは、どういう意味でしょうか。
2013年に、BRAINという専門誌に発表された興味深い論文の内容にちなんだタイトルです。長い間行方不明になっていたアインシュタインの脳の、未公表写真が何枚か発見されたのです。すると、その左手指の領野に、オメガを逆にした特徴的な発達が見られるとわかりました。
アインシュタインはお母さんの影響で6歳頃からヴァイオリンを始め、終生楽しんだのです。実は、幼い頃に弦楽器の練習を始めると、この部分が立体的に発達することが最近わかってきたのです。弦楽器、特にヴァイオリンの演奏には、左の手指を繊細に動かす必要がありますね。そして、逆オメガの形に発達するこの部分こそ、進化のフォッサマグナとでも呼ぶべき重要な部分と関連があるのです。
――つまり、アインシュタインの知性と指の発達には関連性があると?
私はそう考えています。それは、進化の過程と関わりがあるのです。
生まれた直後の赤ちゃんは、言葉を話すことができませんね。ゆっくりと時間をかけて成長し、言葉を話すようになります。その過程で何が起こるかといえば、まず立ち上がり、歩き始める。そして、何かを掴むことしかできなかった手が自由になり、指で物をつまめるようになる。
こうした発達は、大きな流れで捉えたとき、類人猿からヒトへの進化の最終過程で起こったことと同じなのです。手指の発達は、脳の中の感覚と運動を連合する領野、場所で言えば「中心溝」と呼ばれるあたりの発達と連動しています。ここが大きくなり、手指を細かく使えるようになる。すると指をますます動かすようになり、その結果さらに脳が発達する。器用になった指は高度な道具を生み出して知能が開花した。進化の過程で、こうした循環が起きたことが推察されます。
1人の人間の発達においても同じことで、逆オメガはまさにこの中心溝とそのあたりに生まれた新運動野の発達を示す現象なのです。この器用さは額の後ろの前頭前野と連携した働きですから、この新運動野が発達すれば、抽象思考に関わる能力が磨かれる可能性があると私は考えます。この場合、早めの年齢で始めることが重要です。
アインシュタインは、数学的思考と音楽の演奏には共通点がある、という意味のことを言っています。音楽が持つ力を考える上でも、大変興味深い発言ですね。
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