- 2014.10.26
- インタビュー・対談
巻末特別対談
科学の研究って役に立つの?
成毛眞×田中里桜
「本の話」編集部
『理系の子 高校生科学オリンピックの青春』 (ジュディ・ダットン 著/横山啓明 訳)
ジャンル :
#ノンフィクション
成毛 田中さんがサイエンス・フェアに出られたのは何年前でしたっけ。
田中 2011年に出たので、3年経ったくらいですね。
成毛 有孔虫の研究を始めてから何年になります?
田中 中学1年からですから7年ですね。研究自体は5年で1つ完結した感じになっています。それでISEFに行きました。正確に言うと有孔虫自体を研究しているのではなくて、千葉県の地質を、有孔虫を示標にして研究してるということなんです。
成毛 今は、使っている示標生物や何かを変えた、もしくは全然違う方向に行っちゃったんですか。
田中 去年大学に入り、今はまだ最終的に何を専門に研究するかは決めていないんです。そういう進路のことが、ISEFに行ったことで一番考え方が変わった部分でもあります。ISEFに行く前は地学に一番興味があって、あ、これが自分のやりたいことだ、と思っていました。大学へ行った先も専門性を高めるような感じでどんどん突き進んでいくつもりだったんです。けれども、ISEFに行ってからは、むしろ自分のやりたいことだけを見つめているんじゃなくて、いろんなことをやってみようというふうに視界が開けました。
成毛 それは、ISEFのほかの出場者の研究を見て?
田中 それもありますけど、一番影響が大きいと思うのは、審査員の先生ですね。世界の超一流の先生方なので。私の研究の分野ですごく掘り下げた話ができたり、研究の発展性とか問題点とかを指摘してもらったりして、すごく刺激を受けました。また、これから自分はどうしていこうか悩んでいたときだったので、一流の研究者がどういう視点で研究をやっているのかを、自分のフィールドで話してもらえたことはとても参考になりました。私はそれまでは「人の役に立つために自分の研究をどうしたらいいのか」という視点がまったくなかったんですが、一流の研究者はそういう視点から問題を見つけて解決していっているというのが対話を通してすごく感じられました。
成毛 ああ、なるほどねぇ。そういうことなんだ。
田中 自分のやりたいことだけ、自分の好きなことだけに絞って物事を見ているのでは、そういうふうにはなれないんだなあと思って。
成毛 なるほどね。とはいえ、一方で純粋科学をやっている研究者もいるじゃないですか。宇宙論をやっている人たちとか。そういう人を何人か知っているんだけど、彼らの研究はあまりに純粋すぎて、社会の役に立つどころか人類の役に立つんだろうかと思うことがある(笑)。
田中 私のやっている研究もそういう性質のものなんです。ISEFに出るときに一番困ったのが、「千葉県の地質」というのはすごいローカルな話題だったので、どういうふうに世界に持っていこうか、ということでした。
成毛 あ、そうか。そういう意味でも純粋科学に近い。他者から見たら、「おれには関係ない」、みたいに見えなくもない(笑)。
田中 でも、ISEFでは応用的な内容じゃなくて基礎科学的な内容を学生がやっている、ということにむしろ評価をいただいた感じが強いですね。
成毛 そうでしょうね。この『理系の子』を読んでいても、それぞれにいろんなアプローチがあります。廃品から温水器をつくり出す創意工夫型みたいな人もいれば、いろんなタイプの人たちがいて、その意味ではバラバラ。発表する側も、採点する側の先生たちも、バラッバラな人たちが集まっている一方で、この本のタイトルどおり、みんな「理系」ですよね。論理的にものを考えることができる。「論理的にものを考える力」というのは、研究する上で重要ですか。
田中 そうだと思います。そして学生が科学研究をすることで、自分で問題を見つけて解決する力が、すごく鍛えられると思います。
成毛 「問題を見つける」ことと、それを「解決すること」では、比率でいうと、それぞれどのくらい重要ですか。
田中 一連のことなので、どちらがどう大事っていう感じではないと思うのですが、そうですね、やっぱり問題を見つけて解決するためには、柔軟な思考とか、いろんな側面からものごとを見る、多角的な視点を持つことが、すごく必要になってくると思うので、そっちがより重要かなと思います。
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