『武士道シックスティーン』から始まった香織と早苗、2人の女子高校生の剣道を巡る青春を描いた「武士道」サーガに、6年ぶりの新刊が出た!
「物語からしばらく離れていたので、不安もありましたが、書き始めてみたら、6年の間にあったことを、彼女たちからわれ先に『こんなことがありました』という報告を受けて、それを聞き書きしていくような感じで、とても楽しかったです。今回は、離れ離れだった2人が、ふたたび桐谷道場に戻ってきたので、前作とは、また違った動きになって、よかったかもしれません。2人が『シックスティーン』のように、寄っちゃあケンカし、って状態になりましたけど(笑)」
物語は、高校卒業から6年後、早苗の結婚式から始まり、香織の師匠である桐谷玄明が倒れ、道場の閉鎖を宣言することで、大きく動き始める。香織は、道場の後継者として名乗りをあげるが、それには、桐谷道場に代々伝わる〈シカケ〉と〈オサメ〉という男子でも習得が厳しいという形を修める必要が。しかし香織は大切な道場を守るため、早苗の夫・充也から〈シカケ〉と〈オサメ〉を習う……じつは、この物語の原型は、すでに『エイティーン』のときに存在していたという。
「『香織と早苗が大人になった話』そのものは、6年前に書いていたんですが、高校3年で2人が対決する最後のインターハイの余韻を残すため、その部分を『エイティーン』では、あえて落としたんです。ただ、『ジェネレーション』を書くにあたり、その部分をどう物語に仕立てるか、書ききれる確信がなかったんです」
今回、新たに登場する剣道を習いに来た外国人のジェフ。彼が道場の存続に重要なカギを握ることになるのだが、彼の存在が、終わったはずの物語を甦らせるのに重要な役割を果たした。
「すでに3作で書きたいことは書き尽くしたつもりでしたが、もし、次に書くことがあれば、〈伝える〉ことがテーマになるとは思っていたんです。でも〈次の世代〉のことは当然として、何か別の要素も見つけたいと思っていたら、思いのほか、時間がかかってしまいました。そうして試行錯誤をしているうちに、日本人の価値観の中に、自然と溶け込んでいて気づかないけれど、外国との文化の比較を通して、改めて浮かび上がるものがあるんじゃないか、と。それが、今回、ジェフという外国人の登場に繋がりました」
著者も想定外だったという続編は、エンタメの名手が、じっくりと物語を育てたことによって、待つ甲斐のあった作品に仕上がったようだ。