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トランプ大統領で世界はどうなる? 日本はどうする?

『新・リーダー論 大格差時代のインテリジェンス』 (池上彰・佐藤優 著)

トランプ大統領の誕生で世界はどう変わるのか? 10月刊の最新著『新・リーダー論――大格差時代のインテリジェンス』(文春新書)で、池上彰氏と佐藤優氏は、トランプ大統領誕生の可能性と、そこから予想される事態を論じている。ここに議論の一部を紹介する。

なぜトランプは支持されたのか?――変化を好むアメリカ社会

佐藤 ここまで開き直っているわけですから、トランプ相手にまともな議論は成り立たないのですが、人々が何を潜在的に期待しているかをこれほど正確に理解しているわけで、その影響力は侮れません。

池上 トランプの場合、世論調査の支持率と共和党候補選びの実際の投票にずれがありました。常に実際の得票率が世論調査の支持率を上回っていたのです。人種差別主義者だと思われてしまいますから、トランプ支持は大っぴらには口にできない。しかし投票では、トランプに入れる。そういう人が多いからです。

佐藤 今回の大統領選で特徴的なのは、共和党のトランプの支持者と民主党のサンダースの支持者が、実はかなり重なり合っているように見えることです。

池上 彼らの根底には、既成秩序に対する反発、何も決められない政治に対する反発があります。さらには、白人層がアメリカ社会の中でマイノリティ(少数派)に転落する、という危機意識もあります。

佐藤 白人もいずれ少数派に転落し、低学歴の白人労働者は低賃金で働く中南米からの移民に仕事を奪われるのではないか。トランプ支持の背景には、そうした白人の不安がある。

池上 既成の共和党員ではないから、発言が新鮮で、「何か政治を変えてくれるのではないか」と期待されている。

佐藤 アメリカには、元々ワシントン政界の内輪でない者に対する期待がありますね。それゆえに、ジミー・カーターというジョージアの農場主が、突然、出てきて大統領になったりする。レーガンにしても、カリフォルニアの州知事は務めましたが、映画俳優あがりで、どちらかと言えば、政治の玄人ではない。クリントンも、アーカンソー州知事。日本で言えば、岩手県知事のようなイメージで、そういう人物がいきなり出てくると、「新鮮だ」と受け入れられる。

 要するに、現職であることは必ずしも強みにならず、むしろマイナス要因になるのが、アメリカの選挙の特徴です。

池上 二〇〇〇年のブッシュ対ゴアの大統領選挙の時もそうでした。民主党候補のアル・ゴアは、経験豊かなベテラン政治家。しかし、結局、「ワシントンの内輪の人間」と思われてしまい、敗れました。

 今回の民主党の大統領候補選びでは、ヒラリー・クリントンは、「ベテランで経験豊富である」というのをアピールしましたが、サンダースの登場によって、むしろ逆効果になってしまった。戦略を間違えたのです。

 共和党の大統領候補選びでも、出馬した候補のなかでは、ジェブ・ブッシュは相当まともな政治家でした。「ブッシュ家の最高傑作」と言われるほどで──あるいは兄貴の前大統領がひどすぎただけなのかもしれませんが──、穏健でバランスのとれたまともな政治家なのに、「やっぱりブッシュだろ。ワシントンの内輪の人間だろ」と思われて早々に脱落しました。

佐藤 それだけアメリカは、疲れている、ということですね。ここまで格差が拡大すると、「アメリカン・ドリームなど絶対に実現しない」ということが、誰の目にも明らかになる。

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