――巻頭の「結婚式とお葬式って、やることはあまりかわりません」という一文に驚かされました。
奥山 ええ、故人・喪主のかわりに新郎新婦・両家があって、式次第を決めて、人を呼んで、儀式を執り行って、宴会をして、お土産を渡して……段取り自体はほとんど変わりません。
――今回出されるこの本は、小説形式で、故人や遺族の立場に立ってお葬式を行う具体的な方法と考え方が綴られています。お書きになったきっかけは?
奥山 大学卒業後二年間葬儀社に勤めました。そのとき、疑問に思ったことや、葬儀での遺族の多忙さを見て、退社後、喪主側の立場での葬式実用誌「フリースタイルなお別れざっし 葬」を発行したんです。この雑誌を読んだ編集者の方に一冊にまとめたら、と声を掛けていただいたことがきっかけです。
――新卒で葬儀社を就職先に選ばれたのですね。
奥山 実は、特に葬儀社を選んだのではないんです。冠婚葬祭一般、結婚式を扱う部署もありますし、スーパーも経営している、地元では大企業でした。まさか、葬儀部門に配属になるとは……。まあ、就活の面接の時から予感はあったのですが。仕事の内容は、葬儀の段取りや司会、祭壇をご自宅に設営したり、補助的にですがご遺体を拭いたりすることもありました。ただ、時間が不規則なところはきつい仕事です。普通に昼間働いた後に、夜勤といって、夜の電話当番があります。お葬式依頼の電話を待つのですが、「呼ぶ人」という言い方があって、私はまさにそういうタイプでした。ある人はまったく夜の依頼がないのに、私は大晦日に四件電話がかかってきたことも。除夜の鐘を聞きながらたった一人で四件の通夜・葬儀に対応して、お正月も必然的に仕事でした。
――お葬式は、葬儀社側はもちろん、それに輪を掛けてご遺族が忙しく、倒れる方も結構いるとか。
奥山 喪主の方はメンタル的にきつい上に、周りから段取りであれこれ言われて対応しなければなりません。肝心なのは故人とのお別れなのですが。故人のご遺体があるのは火葬までです。気がついたら遺灰になっていた、ということになりかねません。実際にそういう例が多くて、ゆっくり故人と向かい合う時間がないのです。出費も大きいですし、ご遺族のその心労は大変なものだと思います。ですから、死亡届を出すまでに一週間の猶予がありますので、一日だけでも何もせず、ゆっくり考える時間を持つのもいいと思います。
また、葬儀社に対して不信や不満がある方も多いのではないでしょうか。高額な葬儀費用の割に満足なお葬式が挙げられないからです。多くの方は、費用を嵩上げしている豪華な白木の祭壇や桐の御棺に、それほど魅力を感じていません。例えば御棺は一般的に、葬儀社では卸値の十倍の値段をつけます。たしかに木製なので保管場所や湿度の管理は大変ですが、利幅が大きすぎると感じます。自分が望んでいないものにお金を払うのは納得いきませんし、人間は求めるものにはお金を払います。ですから、葬儀社も故人の趣味嗜好を生かした葬儀を提案していった方がいいのではないでしょうか。