- 2015.11.09
- インタビュー・対談
京大ミステリ研の先輩・後輩が語る、学生時代の思い出と創作の裏側(前編)
「本の話」編集部
『赤い博物館』 (大山誠一郎 著)/『キングレオの冒険』 (円居挽 著)
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
今年9月に初めて本格警察小説『赤い博物館』を上梓した大山誠一郎さんと、個性的な名探偵が活躍する『キングレオの冒険』を6月に刊行した円居挽さん。京都大学推理小説研究会の先輩・後輩にあたるお二人が、互いの作品のこと、京大推理小説研究会のこと、そしてこれまで多大なる影響と刺激を受けてきた古今のミステリについて語り尽くしました。
――お二人は、ミステリ作家を数多く輩出していることで知られる京都大学推理小説研究会の先輩・後輩にあたります。京大ミステリ研での経験は、それぞれの作品にどのように結実していったのでしょうか? 当時の思い出をお聞かせください。
大山 私は1990年、推理小説研究会に入りたくて京大に入学しました。綾辻行人さんの『十角館の殺人』の解説の中で、島田荘司さんが京大ミステリ研について書かれているんです。それを読んで、作家の卵たちが切磋琢磨し合うミステリ版“虎の穴”のようなところを想像していたのですが、実際に入ってみると、同期や1期上では私以外に作家志望がおらず、ちょっと拍子抜けしました。
2期上に麻耶雄嵩さんがいてさかんに作品を発表されていたのですが、上回生からも一目置かれるほどの存在で、あまりにレベルが高すぎて、残念ながら切磋琢磨する相手とはなりませんでしたね。
――その頃、他に作家の方はいらっしゃいましたか?
大山 我孫子(武丸)さんがまだ学生で、8回生でいらっしゃいました(笑)。
京大ミステリ研には例会があり、そのあと皆で晩御飯を食べ、喫茶店に行くのですが、すでにデビューされていた綾辻行人さんや法月綸太郎さんが顔を出されることもありましたね。私はミステリ研に入るまで周囲にミステリの話が通じる相手が一人もいなかったので、言葉が通じることに感動してすっかり舞い上がって授業にあまり出なくなって留年し、親に大変な迷惑をかけました。
円居 僕も大山さんと同じで、作家になりたくて、そのために京大ミステリ研に入ろうと、京大に入学しました。“虎の穴”を想像していたら、実際はそうではなかったというところまで同じです。
大山 京大ミステリ研には伝統的に「犯人当て」という制度がありまして、私の頃は出題者が問題編を朗読し、他の会員が推理したあと、出題者が解決編を朗読するというやり方でした。京大ミステリ研が作家を輩出しているのは、この「犯人当て」によって鍛えられるというのが大きいと思います。
――先輩から厳しく指導されることはありましたか?
大山 創立当初は、出題された犯人当てがアンフェアだったり非論理的だったりすると容赦のない批判が加えられるので、戦々恐々としていたそうですが、私の頃は皆さん優しくて、そんなことはありませんでしたね。
円居 僕は犯人当てが下手だったので、何度もえらい目にあいました。デビューが決まったのが6回生の終わり頃だったのですが、それまでいい評価をもらったことはほとんどなかったですね。あの時に先輩方から厳しく指導していただいたお蔭で今があると思っています。
僕は入会当時、入会の動機を訊かれて「清涼院流水先生の『コズミック』という本を読んで……」という話をしたんです。そうしたら、ものすごく警戒されて、ブラックリストに入ってしまった。それで、特に厳しい指導を受けたのかもしれません(笑)。
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