- 2015.11.09
- インタビュー・対談
京大ミステリ研の先輩・後輩が語る、学生時代の思い出と創作の裏側(前編)
「本の話」編集部
『赤い博物館』 (大山誠一郎 著)/『キングレオの冒険』 (円居挽 著)
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
デビュー前からあった構想
――清涼院さんも京大ミステリ研出身ですが、デビューしたときは賛否両論を巻き起こしましたね。
さて、ここからはお二人の作品について伺いたいと思います。大山さんは『密室蒐集家』で第13回本格ミステリ大賞を受賞されましたが、これは「密室」に対するこだわりが濃縮された作品です。大山さんは、密室トリックで知られる作家、ジョン・ディクスン・カーに対する深い愛情を表明されていますね。
大山 はい。中学3年の時に『白い僧院の殺人』を創元推理文庫で読んだのが最初で、それから高校1年になる春休みに『三つの棺』を読んで打ちのめされ、一気にはまりました。
――一転して、『赤い博物館』は、警察ミステリであり、基本的にはリアリズムの手法を用いていますが、その一方でものすごい本格ミステリでもあります。
大山 実は、「赤い博物館」という設定はデビュー前から考えていました。スコットランドヤード(ロンドン警視庁)にブラックミュージアム(黒い博物館)と呼ばれる一室があって、過去の有名な犯罪事件の遺留品を納めているんです。その存在を知って、建物全体が「犯罪博物館」となっていたらおもしろいなと。
それと、私は警察小説が大好きなんです。逢坂剛さんの「百舌シリーズ」をはじめ、佐々木譲さんの『警官の血』や、今野敏さんの「隠蔽捜査シリーズ」など愛読しているので、今回はそういうテイストも入れてみました。
円居 構図が逆転するのが大山作品の特徴ですが、それを「未解決事件」というフォーマットでやったらこうなるのかという、斬新な驚きがありました。最初にある構図と、それを逆転させた真相とを結びつけるのは、すごく苦労されるのではないでしょうか?
大山 たとえば、3篇目の「死が共犯者を別つまで」は交換殺人ものですが、交換殺人は、犯人が二人、被害者も二人、四つの要素からなり、その四つの要素のあいだで殺意がクロスするというのが基本パターンです。作品を書くにあたっては、この四つの要素の扱い方にどのようなパターンがあるのか、まだ書かれていない組み合わせはないかと考えるところから始めました。
私の場合、最初に「密室」「誘拐」「復讐手記もの」などテーマを決めたら、まずはそのテーマで書かれた過去の作品のタイトルを書き出すんです。それを見ながら、そのテーマを構成する要素を抽出し、この要素をこんなふうに扱った作品はないのでは、というふうに考えていきます。タイトルを書き出すのが一番楽しくて、その後は苦しむばかりです(笑)。
円居 『赤い博物館』は短篇集ですが、1篇ずつ読み進めるうちに大山さんの呼吸のようなものがわかってくるんです。それが、4篇目の「炎」では、思いつく推理の手が全部先に潰されていく。最後には全てが覆されて、驚きました。
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