インタビューほか

京大ミステリ研の先輩・後輩が語る、学生時代の思い出と創作の裏側(前編)

「本の話」編集部

『赤い博物館』 (大山誠一郎 著)/『キングレオの冒険』 (円居挽 著)

デビュー前からあった構想

『密室蒐集家』 (大山誠一郎 著)

――清涼院さんも京大ミステリ研出身ですが、デビューしたときは賛否両論を巻き起こしましたね。

 さて、ここからはお二人の作品について伺いたいと思います。大山さんは『密室蒐集家』で第13回本格ミステリ大賞を受賞されましたが、これは「密室」に対するこだわりが濃縮された作品です。大山さんは、密室トリックで知られる作家、ジョン・ディクスン・カーに対する深い愛情を表明されていますね。

大山 はい。中学3年の時に『白い僧院の殺人』を創元推理文庫で読んだのが最初で、それから高校1年になる春休みに『三つの棺』を読んで打ちのめされ、一気にはまりました。

『赤い博物館』 (大山誠一郎 著)

――一転して、『赤い博物館』は、警察ミステリであり、基本的にはリアリズムの手法を用いていますが、その一方でものすごい本格ミステリでもあります。

大山 実は、「赤い博物館」という設定はデビュー前から考えていました。スコットランドヤード(ロンドン警視庁)にブラックミュージアム(黒い博物館)と呼ばれる一室があって、過去の有名な犯罪事件の遺留品を納めているんです。その存在を知って、建物全体が「犯罪博物館」となっていたらおもしろいなと。

 それと、私は警察小説が大好きなんです。逢坂剛さんの「百舌シリーズ」をはじめ、佐々木譲さんの『警官の血』や、今野敏さんの「隠蔽捜査シリーズ」など愛読しているので、今回はそういうテイストも入れてみました。

円居 構図が逆転するのが大山作品の特徴ですが、それを「未解決事件」というフォーマットでやったらこうなるのかという、斬新な驚きがありました。最初にある構図と、それを逆転させた真相とを結びつけるのは、すごく苦労されるのではないでしょうか?

大山 たとえば、3篇目の「死が共犯者を別つまで」は交換殺人ものですが、交換殺人は、犯人が二人、被害者も二人、四つの要素からなり、その四つの要素のあいだで殺意がクロスするというのが基本パターンです。作品を書くにあたっては、この四つの要素の扱い方にどのようなパターンがあるのか、まだ書かれていない組み合わせはないかと考えるところから始めました。

 私の場合、最初に「密室」「誘拐」「復讐手記もの」などテーマを決めたら、まずはそのテーマで書かれた過去の作品のタイトルを書き出すんです。それを見ながら、そのテーマを構成する要素を抽出し、この要素をこんなふうに扱った作品はないのでは、というふうに考えていきます。タイトルを書き出すのが一番楽しくて、その後は苦しむばかりです(笑)。

円居 『赤い博物館』は短篇集ですが、1篇ずつ読み進めるうちに大山さんの呼吸のようなものがわかってくるんです。それが、4篇目の「炎」では、思いつく推理の手が全部先に潰されていく。最後には全てが覆されて、驚きました。


「京大ミステリ研の先輩・後輩が語る。学生時代の思い出と創作の裏側(後編)」へ続く

大山誠一郎(おおやませいいちろう)
1971年生まれ。京都大学推理小説研究会出身。サークル在籍中は「犯人当て」の名手として知られた。2004年、『アルファベット・パズラーズ』でデビュー。2013年、『密室蒐集家』で第13回本格ミステリ大賞を受賞。他の著作に『仮面幻双曲』。訳書にエドマンド・クリスピン『永久の別れのために』、ニコラス・ブレイク『死の殻』がある。

円居挽(まどいばん)
1983年、奈良県生まれ。京都大学推理小説研究会出身。『丸太町ルヴォワール』で講談社BOXより長編デビュー。同作は「ミステリが読みたい! 2010年版」新人賞国内編で2位、「このミステリーがすごい! 2011年版」で国内編11位を獲得した。以後、シリーズ作となる『烏丸ルヴォワール』『今出川ルヴォワール』『河原町ルヴォワール』(すべて講談社)のほか『クローバー・リーフをもう一杯 今宵、謎解きバー「三号館」へ』(角川書店)、『シャーロック・ノート 学園裁判と密室の謎』(新潮文庫nex)、『キングレオの冒険』(文藝春秋)刊行。

赤い博物館
大山誠一郎・著

定価:本体1,600円+税 発売日:2015年09月19日

詳しい内容はこちら

密室蒐集家
大山誠一郎

定価:本体660円+税 発売日:2015年11月10日

詳しい内容はこちら

キングレオの冒険
円居挽・著

定価:本体1,150円+税 発売日:2015年06月20日

詳しい内容はこちら



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