書評

“好きなもの”とダメ出しが生んだ、論理とキャラクターの両立

文: 円堂都司昭 (文芸評論家)

『キングレオの冒険』(円居 挽 著)

『キングレオの冒険』(円居 挽 著)

 京都市四条烏丸の一等地に本社オフィスをかまえる日本探偵公社。この組織に所属する探偵は公的に警察と連携し、犯罪捜査にかかわっていた。探偵たちのなかでも傑出した才能を誇っていたのが、天親獅子丸だ。推理力に優れるだけでなく、スポーツ万能な美男子。公社では広報活動の一環として、脚本室で探偵の扱った事件を脚色した物語の原作を作り、各種メディアに供給している。なかでも、獅子丸がモデルの「キングレオ」シリーズは、人気が高かった。シリーズのスクリプトライターである天親大河は獅子丸の従兄弟であり、この傲岸不遜な名探偵の助手でもあった。本書は、そんな獅子丸と大河の活躍を描いた円居挽の連作短編集『キングレオの冒険』(二〇一五年)の文庫化である。

 綾辻行人、法月綸太郎、麻耶雄嵩など多くの本格ミステリ作家を輩出した京都大学推理小説研究会(以下、京大ミステリ研)の出身である円居挽は『キングレオの冒険』刊行時、サークルの先輩であり『密室蒐集家』などで知られる大山誠一郎と対談していた(文藝春秋BOOKS http://books.bunshun.jp/articles/-/3299)。そこで円居は、本作について「京都、探偵の会社、シャーロック・ホームズ。自分の好きなものを全部盛り込みました」と語っていた。著者本人があげたこの三つを軸にして『キングレオの冒険』を解説しようと思う。



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キングレオの冒険円居 挽

定価:本体790円+税発売日:2018年04月10日