- 2015.05.01
- 書評
「反米」のために損をしている日本
歴史認識問題、政治経済――日米戦後70年の「ねじれ」を明らかに
文:冷泉 彰彦
『「反米」日本の正体』 (冷泉彰彦 著)
ジャンル :
#政治・経済・ビジネス
このたび刊行となった『「反米」日本の正体』では安倍政権の対外イメージの問題から、沖縄問題まで軍事外交の問題をストレートに論じてみました。「心の奥に反米を抱えた」存在である「親米保守」にしても、「米国の軍事覇権を許さない」ことを「自分探しの鍵」として使い続ける「反米リベラル」にしても、米国との理念的同盟のパートナーではありません。その両者に引き裂かれた日本と米国の関係というのは、表面的な「蜜月」とは裏腹に深刻な危機を孕んでいるのではないかというのが、私の問題意識です。
詳しくは本書をご覧いただくとして、現在の日本社会を見渡してみますと、一つのことに気付かされます。
それは、「明らかにアメリカに良いお手本がある」にもかかわらず日本社会が素直にアメリカのアプローチを受け入れない、そのために日本として損をしているというケースです。
例えば地方自治の問題がそうです。アメリカ政治の大きな特徴に、地方の独立という問題があります。各州は独自の州法を持つことから州境を越えると酒が買えなかったり制限速度が異なったりします。また消費税率も違います。単に法律が異なるだけでなく、州そして市町村は強い独立採算制を取っており、カネが足りなくなれば住民投票を経て起債をしたり、その借りたカネが返せなくなったら破産もするのです。そうした中で、地方の自治は文字通り独立性を確保しながら、その独立に見合う責任も負っているわけです。地方交付税によって国に依存し、国に支配された日本の地方自治とは正反対の姿がそこにはあります。過疎高齢化の中で、地方が「消滅する」という危機にある日本では、明らかにこのアメリカの地方自治はお手本になると思うのです。
ですが、日本の地方政治はそれこそ政友会以来の「反米を内包した保守イデオロギー」と、つい二十数年前まで社会主義を信奉していた「反米左派」によってコントロールされているわけです。その両者は、ともに「大きな政府」を志向しているわけで、責任ある独立採算制による地方自治という思想が浸透する土壌は、実は極めて限られてしまっています。
少子化の問題もそうです。アメリカは、先進国中唯一と言って良い、人口置換水準、つまり合計特殊出生率が2.1を越えた社会です。ヒスパニック系移民の出生率が高いということもありますが、先祖代々のアメリカ人の中産階級にも、「子どもは3人」というライフスタイルが根付いているからです。
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