──読者自身の映画鑑賞歴とも響きあうはずです。
藤森 ファンというものは、みんな独善的です。たとえば「これは最高傑作だ」というひとがいれば、「そんな映画のどこがいいの」というひともいる。だから、僕自身の映画史を書き込みました。そういう意味では、客観的なノンフィクションではありません。
いちばん大きなテーマは、広告なんです。新聞広告(アドヴァタイジング)があって、早川さんが仕掛けるパブリシティがありますね。そのふたつの力がものすごく強くて、どれだけ僕たちをワクワクさせてくれたことか。それをできるだけ見せたかった。
僕も広告制作という仕事を四十年ほどやってきて、新聞広告やテレビのCMを作ってきたので、広告から映画を見ていくとき、自分の経験や知識を踏まえれば、映画宣伝というもの、そして映画宣伝に関わってきた早川龍雄というひと、さらにはその先に映画という文化が見えてくるのではないかという意図がありました。
僕はある洋酒会社の仕事をメインでやってきましたが、ウィスキーやビールを宣伝することと、映画を宣伝することのどこがちがうか。基本的にちがうのは、〈夢〉ですかね。いかに夢を与えるかということですね。あらためて、映画というのは〈夢〉の文化だなあとつくづく感じました。
映画ファンはどこへ行ってしまったのか
──映画が与えてくれる夢という点に関して言うと、たとえば本書のタイトルの『ロードショーが待ち遠しい』ですが、本当にロードショーの初日が待ち遠しかった頃というのがありました。今ではもう想像できない。それこそ初日になると映画館を長い列が取り巻く。みんなが期待に胸ふくらませて映画館に足を運んだという時代がありました。日本人がアメリカ文化に対して〈夢〉を抱きつづけていた時代ですね。
藤森 アメリカ映画に関しては、これは僕の嗜好もあるけれど、六〇年代の後半から七〇年代、八〇年代に入るあたりまでが、たぶんアメリカ映画がいろいろな意味で面白くて、名作が多く生まれました。その中にワーナー映画がたくさんあったわけです。本の中では数字をたくさんあげていて、入場者がどれだけあったのか、配給収入はどうだったか、映画館の数はどうなっていたかを記してありますが、数字的に見ても、アメリカ映画の全盛期はそのあたりまででしょう。
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