
- 2007.10.20
- インタビュー・対談
「走る」ことを軸にした僕の個人史(メモワール)
五十嵐 文生 (朝日新聞社ジャーナリスト学校主任研究員)
『走ることについて語るときに僕の語ること』 (村上春樹 著)
贅肉がつくと頭の働きが鈍くなる
――ゴルフとかはおやりにならないですね。
小説を書いて翻訳をして、走って泳いで、ある程度家庭サービスをして、それから中古レコード屋に行ったりしてると、それですぐ一日が終わるんです。ゴルフをやらない、漫画を読まない、雑誌の連載はなるべくやらない……、というようなのは好き嫌いというよりは、純粋にプライオリティー(優先順位)の問題なんです。そういうことにまでまわせる時間が現実的にない。でも運動のための一時間だけは、何があってもとりあえず確保します。
――体重とかは変わらないですね。
二十五年前とほとんど変わらないですね。体型の変化で少しだけ増えましたけど。
贅肉がつくと頭の働きが鈍くなるんです。小説を毎日書いていると、今日は頭の回転が「いい」、「悪い」というのが微妙にわかります。大事な言葉がひとつ浮かんできたり、浮かんでこなかったりする。若いうちはなんだっていいと思うんです。体力と才能があれば、たいていのことはのりこえられます。だけどある年齢を過ぎると、心身共に贅肉を落としておくことがけっこう大事になってきます。
僕は書き直しを何度もやるんです。例えば今年三月に出版した『ロング・グッドバイ』(早川書房)は翻訳ですけど、八校くらいまで出してもらいました。何によらず書くものって、時間をかけて手を入れれば入れるほど必ずよくなるんです。しかしそれをこなすためにはどうしても体力が必要になってきます。腹に力を入れ続けなくちゃならないから。
ものを書く人は、長く書き続けたいなら身体を鍛えろとまではいわないけれど、体力を維持する努力をしたほうがしないよりはいいし、規則正しい生活を送ったほうが送らないよりはいい。そう思います。あくまで個人的な見解ですが。
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