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安心して死を迎えるための〈指南書〉

安心して死を迎えるための〈指南書〉

「本の話」編集部

『めでたくポンと逝く――死を語り合えば生き方が変わる』 (帯津良一 著)

出典 : #本の話
ジャンル : #趣味・実用

──人が死に近づいた時、すぐそばにいるのは医師であることが多い。ところが、本書にあるように、死を目の前にしている患者に対しても、医療現場は「がんばれ、がんばれ」の大合唱という状態が続いているような気がします。

帯津  作家の田口ランディさんが、私の著作(『がん患者 治す力』朝日文庫)の解説を書いてくださったのですが、彼女は父親のためガン治療の現場を歩いた経験から、「およそ死生観をもたない医師に治療されることほど、恐ろしいことはない」と感じたそうです。ただ同時に、あの忙しさを実際に見てしまうと死生観を持てとも強くは言えないと。そこで彼女は、それなら患者が死生観を持とうと提言している。患者を中心に家族、友人が、医療者の作る場の中で、生と死の物語を展開すればいいのではないかというのです。これは私の言う「生と死の統合」と近いなと思います。

──本書のタイトルのように、「おめでとう」と言われ、ポンと楽しい気持ちで旅立ちたいものです。「生と死」を統合するのには、どんな心掛けが必要なのでしょうか。

帯津  現実に死はやってくるわけですから、死と死後の世界について、自分のイメージを考えておくことでしょう。彫刻をつくるように少しずつ形にしていく作業です。焦らなくていいし、むきになって誰かとディスカッションしなくていい。私なんて、ウイスキーをちびちび飲みながら一人で考えていますから(笑)。それも毎回考えているわけではなくて、たまにフッと思い至った時に考えればいい。その程度のことだと思います。

  私は川越の病院で毎週三十分程度の講話をしています。入院している患者さんを対象にしている会ですが、死の話をすると反応がいい。自分一人に突き付けられるのと違いますから、ガン患者もみなニコニコしながら聴いている。半分は人ごと、半分は自分のこととして聴くから気分も楽。死の話に慣れていくには、けっこういい方法ですね。

  日本は宗教の位置取りが曖昧です。死生観も信仰と結びつかないので、自分で築いていくしかない。海外にはそのための枠組みがあると考えれば、ハンディキャップかもしれません。ただ、それでも死に対する関心が高まっているのですから機が熟してきたということでしょう。昔は、死の話というだけで目を背けたり、忌み嫌ったりと露骨に嫌がる人も多かったですが、いまは着実に変わってきています。青木さんが解説で、この本を「安心して死を迎えるための指南書」と書いてくださいましたが、そんな一冊になればうれしいですね。

めでたくポンと逝く
帯津 良一・著

定価:600円(税込) 発売日:2010年10月08日

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