──はい。ゆずは名代の道具屋の愛娘(まなむすめ)で、大変な目利きではあるけど、決して全能ではありませんね。でもそのことは読む側とゆずの距離を縮める、絶妙な効果があると思います。
山本 目利きや商売でゆずばかりが成功して、旦那の真之介が失敗つづきでは立つ瀬がありませんから(笑)、今回はそれぞれの成功と失敗のバランスを考えました。それでも設定上、ゆずが活躍する割合のほうが大きいのですが。
──なるほど。目利きではあるけれど、ゆずほどの眼力はない真之介の奮闘ぶりも、今回の作品では見逃せないところだと思います。なかなか仁清の香炉を譲ってくれない老人や、強引な芹沢鴨と何とか渡り合おうとする姿は、とても人間くささを感じました。「お金のにおい」の結末近く、官窯(かんよう)の壺のしかるべき売り込み先を思いつくところなどは、それまでの失敗を見事に埋め合わせています。
山本 「駆け落ちして夫婦となった大店(おおだな)の娘と奉公人」というゆずと真之介のキャラクターは最初からはっきりしているので、その意味では一話完結の物語を作りやすいところがあるんです。でもこのシリーズは一話完結であるだけではなく、連作でもあるので、全体でなにか通奏低音のようなものを響かせたかった。今回この本には六つの物語が収められていますが、先ほども申し上げたとおり、その中で真之介とゆずは成功と失敗を繰り返します。その繰り返しの中で、二人は互いに助け合いながら少しずつ成長します。それが夫婦愛という言葉だけで表現できるかどうかはわかりませんが、少なくとも今回の作品に共通しているものであることは確かだと思います。
──本作には真之介とゆずのなれそめが描かれた「鶴と亀のゆくえ」も収録されていて、初めてこのシリーズに触れる読者にも親切なものになっていますね。そして『オール讀物』ではすでにシリーズ第三弾が始まっていますが、どのようなことがこれから描かれるのでしょうか。
山本 道具は道具でも、「茶道具」のことに焦点をあてたいと思っています。
──期待しております。最後に読者にメッセージを。
山本 道具を買うときは「ええもんひとつ」。安いものに目移りしてはいけません(笑)。
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