無敵になったような気持ちが湧いてきて書けた
──ニコニコ動画はご存知でしょうか。
又吉 あ、知ってます。
──ありがとうございます。ではこの生放送を見ていただいている視聴者からの質問なのですが、作品を書こうと思ったのはいつ頃で、きっかけとしては何があったのでしょう?
又吉 編集者から小説を書いてみませんかと声をかけていただいたのが大きい理由ですね。あとはテンション上がったというか、ジャッキー・チェンの映画を見た翌日に階段を走りながら駆け上がりたい衝動に駆られるときってあるじゃないですか。あの感じ。西加奈子さんの『サラバ!』を読んで、無敵になったような気持ちが湧いてきて書けたというのはあります。本当『サラバ!』おもしろくて大好きな作品です。
──今回の「火花」は初出の「文學界」では大増刷に結びつけ、単行本も現在64万部まで伸びていると聞きます。今回の芥川賞受賞の効果でミリオンも狙えると思いますが、100万部いけるというイメージはありますか?
又吉 小説を書いてるときはもちろんそんなイメージはなくて、自分で作品を書いているんやっていう気持ちだけで書いてたんですが、書き終わるとやっぱりせっかく書いたんでいろんな人に読んでもらいたいと思うようになりました。さっきも言ったように、僕の作品を読んで小説っておもしろいと思ったら、そこからまた別な作家の本も読んでというふうに、どんどん読んでもらって、本好きな人が増えたらまた楽しくなるなと思いますね。そして、『火花』は若手芸人のことにも触れているので、劇場にはすごく多くの芸人がいることだし、劇場にも大勢の人に来てもらって、全体的にお笑いとか文学、音楽も演劇などもどんどん盛り上がっていけばいいなと思います。
──又吉さんのお笑いの方は話す芸で、小説は書く芸。その違いはありますが又吉さんが表現者として感じているそれぞれの自由なところと不自由なところは?
又吉 お笑いで不自由なことってなんでしょうねえ。うーん……お笑いも割と何やってもいいというのはあるんですけど……。めちゃめちゃ子どもみたいなことをいうと、自分が2人とか3人に瞬間的になれたりすると芸人としての幅が広がるなというのがあるんですが、でもやっぱり人間なので自分の体と声でやるしかないというのがライブ。もしかしたら映像ではそれもできるかもしれないですけど。だからそんなに不自由はないのかなと。と、言いつつも、どうなんですかね。言うたらあかんこととか人によって感じ方が全然違うので、両方そうですよね。小説もやっぱり同じものを書くんですが読む人はみんな違うんで。そこはそれぞれ……あとお笑いの場合はすぐにお客さんが笑ってへんなと思ったらやり方を変えたり、いまだに笑ってませんけど(笑)。でも小説の場合は変えられないですよね、書いてもうたものがそのまま読まれるので、そこの違いはあるかなと。はい。
──以前取材させていただいたときに、小さい頃から自分の頭の中で言葉が溢れてしまって自分は異常なんじゃないかと思ってたとおっしゃっていましたよね。先ほど芸人としてライブをする過程で得たものがどこかに残っていて、文章にそのままではないにしても何らかの形で反映されるとおっしゃっていたのですが、その残っているものというのは自分の頭の中で独り言になることと関係があるのですか?
又吉 独り言というか1人で考えていることが?
──はい。人にも言わなかったこととか自分の中で抑えられなくなったことと書くことがリンクしているのかなと。
又吉 そうですね。割りと近いですね。散歩したり走ったりしてるとき、頭の中にいろいろ言葉が出てきます。それはもう何でもないようなことなんですが、そこから文章を書いたりすることはよくあります。
──最後にひと言。
又吉 本当にたくさんの方々に集まっていただいてありがとうございます。まだ『火花』をお読みでない方がいらっしゃったらぜひ読んでみてください。ありがとうございました。
※受賞後の記者会見後に行なわれた、
テレビ局の囲み取材の模様はこちら>>
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