国際情勢の動きは早いものです。「週刊文春」で世界と日本の動きを基礎・基本から解説するコラム「そこからですか⁉」をまとめたものが本書ですが、文庫化するに当たって読み返してみたところ、いくつかの点に動きがありました。
たとえば地球温暖化防止の国際会議で決まった「パリ協定」です。アメリカのバラク・オバマ前大統領が積極的に取り組んだこともあり、温暖化防止の国際的な枠組みが決まりました。
ところが、ドナルド・トランプ大統領が誕生して一変。二〇一七年六月にはパリ協定からの離脱を宣言しました。
考えてみると、地球温暖化防止のための国際的な枠組みが最初にできたのは、一九九七年。京都で開かれた国際会議で決まった「京都議定書」でした。当時のアメリカは民主党のビル・クリントン政権。環境問題に熱心なアル・ゴア副大統領が京都にまで乗り込んできて、交渉を妥結させました。
しかし、次の大統領選挙で共和党のジョージ・ブッシュ(息子)大統領が誕生すると、京都議定書を認めようとしませんでした。ブッシュが石油業界からの支援を受けていたからです。二酸化炭素など温室効果ガスの排出を削減することは石油産業にマイナスになるから、という判断でした。世界のことよりアメリカの国内産業が大事、ということです。
今回のトランプ大統領の行動を見ていると、「歴史は繰り返す」という言葉を思い出します。国内の石炭産業の関係者に支援され、自分は大統領になれたとトランプは思っています。二期目の選挙で当選するためには、選挙中の公約を実行することが大事。世界のことより自分の選挙だ、というわけです。
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