みなさん、こんにちは。内田樹です。
『内田樹による内田樹』の文庫版、お買い上げありがとうございます。まだお買い上げでなく、書店で立ち読みしている皆さんにも、お手にとってくださったことについてお礼申し上げます。これも「他生の縁」ということで、「あとがき」だけでも最後まで読んでいってください。
まえがきにも書いてありましたが、これはかなり成り立ちの変わった本です。なにしろ自分が書いた本の解説を自分でしているんですから(そして、これはそのさらに解説)。
これを大学院の授業で1年間かけてやりました。誤解して欲しくないんですけれど、決して自分の本を学生院生たちに売り付けるための販促活動の一環としてやったのではありません。「内田先生は本書き過ぎです。初心者がどういう本から読んだらいいか、ブックガイドが要りますよ」と140Bの江弘毅さんに指摘されて始まった企画なのです。翌年に定年退職を控えた最終学期でしたので、自分の神戸女学院大学在職中の全仕事をここで振り返ってみるというのもいいかも知れないと思い、受講生たちに一人一冊好きな本を選んで貰って、それについての評価や感想を拝聴した後に、僕が言い訳というか、説明というか、どういう趣旨でその本を書いたのかお話しするという趣向の授業をやりました。それをテープ起こしして貰ってから、学生院生たちの問いかけや疑問に対する僕からの解説だけを取り出し、それに大々的に加筆したのが本書です。
僕はこれまでも大学や大学院での授業を録音して、それを文字起こししたものに加筆して本を作るというスタイルで、ずいぶんたくさん本を出しました。そんなことをする人って、あまりいないと思いますけれど、このやり方が僕はたいへん気に入っておりました。
授業をやってお給料頂いて、本にして印税頂くという「一粒で二度美味しい」ということもありますけれど、それ以上に、編集者が教室にいてICレコーダーを教卓にセットしていて、「ここでやっている授業でのやりとりがいずれ本になる」という設定が授業をする側にも、受ける側にも、緊張感を与えてくれる点が教育的には効果的だったと思います。