阿部智里さんからの総評
今年もたくさんの書店さんからご応募頂き、本当にありがとうございました。例年同様、審査は写真を基準にしましたが(写真うつりが悪くて選外になってしまった惜しい作品もありました)、今年から文藝春秋の皆さんの投票も選考の基準とさせて頂きました。
去年もすごかったのですが、今年はまた一段とパワーアップした上に参加書店数も多く、いずれも目を剥くほどハイレベルな装飾ばかりでした。結果として「嘘でしょ、これに何も賞がないの!?」と思うような装飾もたくさん出ることになってしまい、順位をつけなければならないのが本当に心苦しかったです。とはいえ、コンテストですので、飾りつけをしてくれた皆さんの熱い思いはしかと受け止めつつ、審査そのものは厳正に行いました。
審査しながら、こんなに愛情のこもった装飾をしてもらえるなんて、八咫烏シリーズはなんて幸せな作品なのだろうとしみじみ思いました。作家はあくまで「書く」ことが仕事ですから、100万部を突破することが出来たのは、書店員の皆様の「売る」ご尽力あってのことです。この場を借りて、心よりの御礼を申し上げます。引き続き、売りたくなるような作品をお届け出来るよう頑張りますので、どうか引き続きよろしくお願いいたします。
最優秀賞
明文堂書店富山新庄経堂店
一昨年のチャンピオンですので、その分審査のハードルは高かったのですが、そのハードルを爆破する勢いでの最優秀賞となりました。
『烏百花』の大きな絵がひときわ目をひきますが、何よりもすごかったのが作品ごとの手描きPOPです。担当に関係なくたくさんの書店員さんが一緒になり、自分の言葉で作品のPOPを作って下さっています。順番が分かりにくいと言われる当シリーズですが、作品のイメージカラーで統一したPOPを一列に配置することによって、未読者の方にも分かりやすい工夫がされています。さらに、すでに文庫化された作品の単行本・外伝未収録の短編が掲載された小説誌、作者のインタビューの乗っている雑誌まで網羅して配置し、コアなファンの方に対しても「ここに来ればすべて揃う」状態になっているのが圧巻でした。よっぽどシリーズが好きで、お客さんのことを考えないと出来ないことだと思います。
飾り付け・手描きPOP・品揃え・陳列、全ての点でほぼ満点です。最終的には、華やかではあるけれど見やすく、未読・既読のお客さんの双方に対し訴求力を持っている点が決め手となり、最優秀賞となりました。いやはや、お見事です。