本の話

読者と作家を結ぶリボンのようなウェブメディア

キーワードで探す 閉じる
強運の女探偵──女探偵・葉村晶シリーズ

強運の女探偵──女探偵・葉村晶シリーズ

若竹 七海

『錆びた滑車 』(若竹七海・著)


ジャンル : #エンタメ・ミステリ

 幸い葉村の減らず口があちこちでウケて、単発の予定だった彼女を二度、三度と登場させることになった。やがて、別方面から女探偵もののおはなしの依頼が来ると、他に女探偵の持ち合わせもないから、葉村を興信所の調査員にした。ついには彼女で一冊作りましょう、ということになって、雑誌掲載時は別の女性主人公の物語だったものを数編、葉村晶を主人公にして書き直し、短編集『依頼人は死んだ』が出来上がった。

 「私も女性探偵ものを書きたい!」という悲願はこうして、なんとなく流れで、葉村晶を軸に、いつの間にか成立してしまったのだ。

 昨年刊行した短編集『静かな炎天』は、ミステリファンクラブ「SRの会」により〈SRアワード2017〉の国内部門に選ばれた。ハードボイルド小説の愛好家集団「マルタの鷹協会日本支部」によるファン投票で〈ファルコン賞〉も受賞。特に厳しい目利きのファンの皆様のお眼鏡に、葉村晶が叶ったことになる。

 作者に十三年間もほったらかしにされ、とっくに消えていてもおかしくないはずが、しぶとく生き延びてきた葉村晶。彼女は不運どころか、とんでもない強運の持ち主ではないか、と近頃、私は考えている。(「週刊読書人」2017年7月28日号より)


若竹七海 (わかたけ・ななみ)
1963年東京生まれ。立教大学文学部卒。1991年「ぼくのミステリな日常」で作家デビュー。2013年「暗い越流」で第66回日本推理作家協会賞〈短編部門〉受賞。2015年「さよならの手口」で〈SRアワード2015〉国内部門を受賞。2016年「静かな炎天」が「このミス」2位、翌年〈SRアワード2017〉国内部門、ファルコン賞受賞。

特設サイトへ
文春文庫
錆びた滑車
若竹七海

定価:880円(税込)発売日:2018年08月03日

文春文庫
静かな炎天
若竹七海

定価:759円(税込)発売日:2016年08月04日

文春文庫
さよならの手口
若竹七海

定価:935円(税込)発売日:2014年11月07日

文春文庫
悪いうさぎ
若竹七海

定価:858円(税込)発売日:2004年07月09日

文春文庫
依頼人は死んだ
若竹七海

定価:770円(税込)発売日:2003年06月10日

プレゼント
  • 『もう明日が待っている』鈴木おさむ・著

    ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。

    応募期間 2024/3/29~2024/4/5
    賞品 『もう明日が待っている』鈴木おさむ・著 5名様

    ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。

ページの先頭へ戻る