
- 2021.03.26
- コラム・エッセイ
祝文庫化! 髙見澤俊彦『音叉』刊行記念エッセイ「1973 あの頃の僕へ」#1
髙見澤俊彦
オール讀物2018年8月号より
出典 : #オール讀物
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
「オール讀物」3・4月合併号にて新連載小説「特撮家族」がスタートしたTHE ALFEEのリーダー、髙見澤俊彦さんの初小説『音叉』が待望の文庫になります。
スピンオフ短編、さらに文庫用書下ろしエッセイも収録! 文庫版『音叉』もぜひお楽しみください!
※単行本刊行時の記事(2018/8/31公開)です。
失敗した……正直そう思った。七三年の春、僕は明治学院高校から同じ敷地内にある明治学院大文学部英文学科に進んだが、どうやら学科の選択を間違えてしまったようだ。
まず最初の講義でつまずいた。それは階段教室で多人数で受講する「英語音声学概論」。言葉は悪いが、クソ面白くないし、講義内容が全然頭に入って来ない。
その時、ハタと気がついた。そっか、僕はそれほど英語に興味がなかったんだ。後の祭りとはこのことだ。じゃあどうしてここを選んだのか? それはシンプルに親や担任に、英文科が一番偏差値の高い学科だと薦められたからにすぎない。僕としてはどこでも良かった。
高校三年間の成績は、クラスでも三人しかいなかったA段階で、無試験でどの学部の学科でも自由に選べた。実は社会学部社会福祉学科というのが個人的に面白そうだなと思っていたが……就職の時につぶしがきかないと周りに説得され、すんなりあきらめた。つまり自分の意志ではなく、言いなりで英文科に決めてしまったのだ。こんなんじゃあ親父の後を継いで教師になろうなんて土台無理な話だよなぁと思いながら、ふと隣に座っている、高校からの友人Tと顔を見合わせると、Tも僕と同じように所在なげだったので、講義の途中だったが、目配せしてサッサとそこから抜け出した。
