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髙見澤俊彦 『音叉』刊行記念エッセイ「1973 あの頃の僕へ」#1

文: 髙見澤俊彦

オール讀物2018年8月号より

『音叉』(髙見澤俊彦 著)

 大学に入って気がついたことが三つある。まずは英文科なのに英語に興味がないこと。二つ目は人と群れるのが苦手であること。三つ目は自分の性格がこれまた思った以上に暗いこと……。

 そう言えばあの頃僕は、ギターをまったく弾いていなかった。というのも高校のバンド仲間全員が、他の大学に行ってしまい、好きな音楽(特にロック)の話をする友人がいなくなったからだ。ギターも弾かず、授業にも身が入らずダラダラした大学生活が、僕をより暗い性格へと変えていったのかもしれない。

 高校時代のバンドはお世辞にも上手いとは言えなかったが、年に一度であっても学園祭で演奏するのは、けっこう楽しみだった。バンド名もない、典型的なクラスのお友達バンド。自由度百パーセントの気楽なバンドだから楽しかったのだろう。

 きっかけは、たまたま鎌倉のMの家に遊びに行った時、部屋にあったギターで、ストーンズのレコードに合わせてポロッと弾いたことだった。Mが驚いたようにお前ってけっこう弾けるんだなと感心し、クラスの他のロック好き仲間と意気投合しバンドを結成した。それも卒業と共に消滅してしまったのだが……。

 拙著『音叉』でも書いたが、僕の高校時代七〇年~七二年は外タレであるロックバンドの初来日ラッシュだった。当然、バンドの仲間とも観に行った。鎌倉のMとはグランド・ファンク・レイルロード。翌年の夏はエマーソン・レイク&パーマー。両者ともコンサート会場は、水道橋にあった今はなき後楽園球場だった。当時初来日したレッド・ツェッペリン、ピンク・フロイドなど、初めて触れた本場のロックサウンドの衝撃は今でも強烈に覚えている。遠い記憶ほど鮮明なのは、それなりに年齢を重ねて来たからだろう。

2へ続く>>

こちらのインタビューが掲載されているオール讀物 8月号

2018年8月号 / 7月21日発売 / 定価980円(本体907円)
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音叉髙見澤俊彦

定価:本体1,700円+税発売日:2018年07月13日


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