人を見つめる鋭い観察眼や、かろやかなユーモア。葉村晶のワイズクラック(しゃれたへらず口)は箴言にみちている。
仕事はできるが不運過ぎる女探偵 葉村晶語録
だいたいが世の中、いちばん嫌いな女がいちばん美味しいところを持っていくようにできているのだ『プレゼント』
わたしは朝食をみっちり食べさえすれば、夕食はゆで卵一個で十分、という体質の持ち主だ。貧乏生活が長かったから、肉体まで安上がりになったのかもしれない『依頼人は死んだ』
わたしにはたくさん欠点があるが、支度が遅いと責める人間はいない『悪いうさぎ』
仕事上、心にもない謙遜やお愛想をふりまかねばならないので、それ以外の場面では社交辞令は使わないようにしている『悪いうさぎ』
トシをとるということは、疲労回復用の精力剤と、入浴剤と、湿布への出費が増大する、ということだ『暗い越流』
自分の容姿に対する幻想とは、十代でお別れした『さよならの手口』
わたしは直接、自分の目で見ることができる単純な景色が好きだ 『さよならの手口』
いろんなことが起こりすぎるほど起きてしまう日もある。平穏で退屈な一日もある。どっちに転ぶかはおわってみなければわからない『静かな炎天』
新しい本の匂いはひとを励ます。時には、喪失の物語が喪失を包んでくれる『静かな炎天』
選択は終わった。時は進んだ。やり直しはできない。だとしたら、いまさら怯えてどうする『錆びた滑車』
目的のためでも手段は選ぶが、許される手段の上限も下限も自分で決めたい『錆びた滑車』
ぬくぬくとした環境に長くいるとえぐみが出る。コーヒーも、人も『錆びた滑車』
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