書評

週刊誌は好きになれない人こそ、この小説を読んでほしい

文: 大矢博子 (書評家)

『スクープのたまご』(大崎 梢 著)

『スクープのたまご』(大崎 梢 著)

 普通の人である日向子が「週刊千石」編集部で見出したものは何か。なぜ週刊誌というものが必要なのか、大きく動く事件の最前線で日向子がたどり着いた答えは何か。本編でじっくり確かめてほしい。ゴシップだろうと事件だろうと、自分には関係ないと思うような事件だろうと、「本当は誰にとっても無縁ではない」と日向子が考える場面がある。その意味がとても重い。本書は決して週刊誌を礼賛も擁護もしない。ただ、相手を選ばず、こうと見込んだら徹底的に追及する週刊誌だからできることがある。週刊誌にしかできないことがある。それがまっすぐに伝わってくる。

 週刊誌は好きになれない――そんな人にこそ本書を読んでほしい。好きにはなれなくても、少し、見方が変わるに違いないから。


 千石社シリーズはすでに四作目が「オール讀物」に掲載中である。次なる舞台はスポーツ雑誌編集部。主人公は本書にも登場した、日向子の同期で友人の目黒明日香だ。またこれまでとは違った出版社の顔を、けれどそこにある共通する思いを、読者に届けてくれることと思う。楽しみにお待ちいただきたい。

スクープのたまご大崎 梢

定価:本体680円+税発売日:2018年09月04日


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