- 2018.09.24
- 書評
アメリカ生まれの「HONKAKU」ミステリー
文:編集部
『数字を一つ思い浮かべろ』(ジョン・ヴァードン 著 浜野アキオ 訳)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
そんな謎たちに立ち向かうガーニーも、古き良き名探偵を思わせる相貌をみせます。すべてを論理的に捉え、物事の真意を解読しようとするガーニーの姿勢は、ともすれば度胸勝負になりがちなアメリカ流の刑事たちと一線を画します。しかも作中で、刑事や検事らがテーブルを囲んでおこなう綿密な捜査会議が二度にわたって描かれ、そこでは徹底的に理詰めのアプローチで、この不可解な犯罪が検討されるのです。
つまりは本格ミステリのスピリットが息づく警察ミステリ。それが本書『数字を一つ思い浮かべろ』なのです。ミステリとしても周到です。思い浮かべた数字を的中させてみせる手紙や雪の中で消える足跡についての「いかにやったのか?」の謎がまずあり、それが解かれると、「なぜやったのか?」「何をやっているのか?」といった謎に変容し、最後には「誰がやったのか?」――すなわち「意外な犯人」が読者を驚かせるという仕組みになっています。
犯人の意外性や、伏線や手がかりに則ったロジカルな謎解き、あるいは大がかりなドンデン返しで本格ミステリの楽しさをもたらしてくれる現代ミステリ作家は少なくありません。ジェフリー・ディーヴァー(『ボーン・コレクター』『ウォッチメイカー』他)やマイクル・コナリー(『ザ・ポエット』『わが心臓の痛み』他)、ジャック・カーリイ(『百番目の男』『ブラッド・ブラザー』他)らが筆頭でしょうか。「信頼できない語り手」をサプライズの核にしたサスペンスは、『ゴーン・ガール』(ギリアン・フリン)や『ガール・オン・ザ・トレイン』(ポーラ・ホーキンズ)、『わたしが眠りにつく前に』(S・J・ワトソン)など、ここ数年の英米のミステリ界で最大のトレンドになっており、これらには日本でいう「叙述トリック」に通じる快感があります。
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