- 2018.09.24
- 書評
アメリカ生まれの「HONKAKU」ミステリー
文:編集部
『数字を一つ思い浮かべろ』(ジョン・ヴァードン 著 浜野アキオ 訳)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
アジア圏では、昨年(二〇一七年)に話題となった『13・67』(陳浩基)をはじめとして、日本式の本格ミステリに影響されたミステリが多く刊行されているようです。また英米でも、桐野夏生『OUT』、東野圭吾『容疑者Xの献身』、横山秀夫『64』、湊かなえ『贖罪』といった日本のミステリが、伝統あるミステリ賞の最終候補となるケースも増えています。ミステリ評論家の千街晶之氏は、ゴシックなミステリにおける「館」趣味の系譜を「伝言ゲーム」になぞらえましたが、英米に発して、いまでは北欧やフランス、ドイツ、東欧、台湾、中国などなど、多くの国や地域で独自に発展した現在のミステリは、classic detective story から crime fiction や thriller へ、あるいは honkaku mystery へと複雑に分岐し、受け継がれ、発展してゆく「伝言ゲーム」の様相をみせているように思われます。そしてそれは、「ミステリ」と大づかみに呼ばれる小説の多様な可能性を証明するものでもあります。
アメリカ型の警察小説と奇術趣味にあふれた classic detective story を融合させた本書もまた、そんな奇妙な伝言ゲームの結果として生まれた honkaku mystery の快作なのです。
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