- 2018.09.24
- 書評
アメリカ生まれの「HONKAKU」ミステリー
文:編集部
『数字を一つ思い浮かべろ』(ジョン・ヴァードン 著 浜野アキオ 訳)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
メレリーはガーニーの住む地域から遠くない山間に住み、心の癒しを求める人々が静養するスピリチュアルな施設を運営していました。問題の「658」の手紙はメレリーにいくらかのカネを要求するものでしたが、要求に応じたメレリーのもとには脅迫状のような犯行予告状のような手紙が頻々と届き、身の危険をおぼえはじめたメレリーは、旧友ガーニーに救けを求めたのです。
今でこそ、比較的裕福な人々のための「導師」として成功を収めているメレリーでしたが、深刻な飲酒癖で荒んだ生活を送った過去があり、まったく怨みを買っていないとは言い切れない。しかし、それでも具体的な犯人の心当たりはない。ガーニーが気乗りしないながらも調査を開始した直後、犯人は第二の「数字当て」を行なってみせ、ついには殺人事件が発生してしまう。一面の雪景色のなかでの凄惨な殺人。現場から延びる犯人の足跡は、森のなかで奇妙なかたちで途切れていた……。
ニューヨーク州犯罪捜査局の捜査官らと協力しつつ、退職刑事ガーニーは不可解な謎をひとつひとつ解明しながら調査を進めてゆきます。しかし、新たな事件が新たな謎を生み、やがては当初の予想をはるかに超える連続殺人計画が浮かび上がってくるのです。
幕開けとなる「標的の脳内を見抜く手紙」にはじまり、古典的な本格ミステリを思わせる謎がつぎつぎに連打されます。
雪上の殺人と奇怪な足跡。
犯行現場に残された犯人からのメッセージ。
共通点などなさそうに見える殺人の被害者たちをつなぐ見えない線。