- 2018.09.24
- 書評
アメリカ生まれの「HONKAKU」ミステリー
文:編集部
『数字を一つ思い浮かべろ』(ジョン・ヴァードン 著 浜野アキオ 訳)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
海外には日本でいう「本格ミステリ」にあたる言葉がありません。エラリイ・クイーンやジョン・ディクスン・カーの名作を手に入れるのは容易ではありませんし、日本でいう「トリック」に逐語的に対応する言葉もありません。ですから、カーやクイーンやクリスティーの「あの面白さ」を、ひとつの伝統として意識する作家が出にくい構造になっています。ただ、こうした状況を不便に感じるひとたちも英米語圏のミステリ・シーンにはいるようで、honkaku mystery という語が使われはじめているそうです。このあたりの事情については松川良宏氏による「『本格(Honkaku)』という言葉が米国『エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン』のブログで紹介される」(https://togetter.com/li/731215)などが大いに参考になります。ここで紹介されているミステリ評論家ジョン・パグマイヤーが、英語圏の honkaku mystery の書き手として期待できるとしたひとりが、本書のジョン・ヴァードンだったのです(なおパグマイヤー論文は、『本格ミステリー・ワールド2015』〈島田荘司監修/南雲堂〉に『本格を讃えて』として翻訳掲載されています)。こうした「honkaku mystery」の文脈では、『コールド・コールド・グラウンド』が邦訳されたアイルランドのエイドリアン・マッキンティも期待株で、英訳版の『占星術殺人事件』(島田荘司)に影響された結果、密室殺人を扱った長編警察小説を二作、書き上げています。
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