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著者インタビュー 宮部みゆき「杉村三郎シリーズの愉しみ方」

著者インタビュー 宮部みゆき「杉村三郎シリーズの愉しみ方」

宮部みゆき

シリーズ累計300万部突破! 『希望荘』『昨日がなければ明日もない』刊行記念


ジャンル : #エンタメ・ミステリ

『 昨日がなければ明日もない』(宮部みゆき 著)

 杉村は警察にコネもない。だから扱えるのは大事件ではなく、直面するのは社会的な「悪」とか構造的な「悪」よりも家庭内、友人関係、会社の中でねじれてしまった人間関係から生まれる「悪意」。そういった身近な「悪意」によってこじれてしまった関係を杉村に解決させるというのが自然な流れでした。

 普通、私立探偵ものの男性主人公は、黙っていても女性のほうが寄ってくる。でも杉村はそういうタイプじゃない。子供からおばさんにまで好かれる。でも好かれているから、かえってズケズケと言われてしまう。彼には物事にずんずん分け入っていくのではなく、聞く人、受信する人であってほしい。でもそれゆえに、すごく無力なことも多い。きっと自信を持って「これが正義だ」とか言えないタイプの人なんです。

 それにしても、杉村が探偵になるまでには最低、長篇二作は必要だと思っていましたが、まさか三巻目が文庫で上下巻になるとは(笑)。『希望荘』を書き始める時に、どうしても震災の当日のことを書いておきたくて、二〇一一年をスタートにして、実は探偵になったときの杉村の年齢設定を少し若返らせているんです。ギリギリ三十代で探偵にならせようと思って。中篇集にしたのは、杉村に探偵としてある程度の場数を踏ませたいと考えたからです。ゆくゆくは、娘の桃子が一度は杉村の家に来たり、彼女が竹中家の人とも仲良くなったりといった展開も考えてみたいですね。

  『希望荘』や『昨日がなければ明日もない』から読み始めた方には、まず私立探偵ものとして愉しんでいただき、もし彼の過去が気になったら初期の三部作を読んで、「杉村はこういう経験をしているのか」とうなずいていただけたら嬉しいです。


宮部みゆき
1960年生まれ。東京・深川育ち。87年「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。以降、『龍は眠る』で日本推理作家協会賞(92年)、『本所深川ふしぎ草紙』で吉川英治文学新人賞(同年)、『火車』で山本周五郎賞(93年)、『蒲生邸事件』で日本SF大賞(97年)、『理由』で直木賞(99年)、『模倣犯』で毎日出版文化賞特別賞(2001年)、『名もなき毒』で吉川英治文学賞(07年)を受賞。

昨日がなければ明日もない
宮部みゆき

定価:1,815円(税込)発売日:2018年11月30日

誰か Somebody
宮部みゆき

定価:836円(税込)発売日:2007年12月06日

名もなき毒
宮部みゆき

定価:1,012円(税込)発売日:2011年12月06日

ペテロの葬列 上
宮部みゆき

定価:803円(税込)発売日:2016年04月08日

ペテロの葬列 下
宮部みゆき

定価:836円(税込)発売日:2016年04月08日

希望荘
宮部みゆき

定価:990円(税込)発売日:2018年11月09日

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