- 2018.11.26
- インタビュー・対談
宮部みゆき 『昨日がなければ明日もない』&『希望荘』刊行記念インタビュー #1
「オール讀物」編集部
シリーズ累計300万部突破!
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
本誌で不定期連載された「杉村三郎」シリーズが、いよいよ単行本として刊行。そこで、これまでの創作秘話、最新作と今後について、たっぷりと聞いた。
シリーズ誕生の原点
──「杉村三郎」シリーズの最新作『昨日がなければ明日もない』が十一月三十日に、シリーズ四作目の文庫『希望荘』が、十一月十日に発売となります。そこで、探偵・杉村三郎のこれまでの歩みを振り返りつつ、新刊と今後のお話を伺います。
宮部 五作目となる『昨日がなければ明日もない』では『希望荘』で、私立探偵事務所を立ち上げた杉村が、きちんとお金をもらっているプロの探偵として、本格的に動き出します。
──収録されている三編は、すべて「オール讀物」に掲載されましたが、杉村三郎が最初に登場した『誰か』(二〇〇三年)は、書下ろしでした。『誰か』から続く長編三作は、杉村が、今多コンツェルングループの社内報の記者兼編集者として、小さな事件を解決するというスタイルでした。
宮部 一番最初に考えていたのは、マイクル・Z・リューインの「アルバート・サムスン」シリーズが大好きなので、自分もこういうのんびりした人のいい私立探偵が主人公の物語をいつか書きたいということでした。装丁も、「アルバート・サムスン」のシリーズを手がけておられる杉田比呂美さんにぜひお願いしたかった。アルバート・サムスンは、裏社会に通じているキリッとした探偵ではなくて、お金に困っていて、思い切って地元のラジオで初めて広告を出してみたとか、扱う案件も大事件ではなく家族の失踪といった市井の探偵です。
──今は、残念ながら新刊は『A型の女』(ハヤカワ・ミステリ文庫)と『眼を開く』(ハヤカワ・ポケット・ミステリ)しか手に入りません。
宮部 ホントに残念ですよね。もうひとつは、私が、コーエン兄弟の『ファーゴ』(一九九六年公開)という映画がすごく好きで……。
──アメリカのファーゴという街を舞台に、狂言誘拐のつもりが殺人を犯し、そのまま、ずるずると犯行を重ねた犯人たちと、そしてその真相を突き止める女性警察署長を描いた映画ですね。
宮部 『スリー・ビルボード』(二〇一八年公開)で二回目のアカデミー賞を獲ったフランシス・マクドーマンドが演じた田舎町の女性警察署長がとても印象に残りました。臨月でおなかの大きい彼女が、よっこらしょと雪のなかブーツで歩きつつ、陰惨な事件を解決していく。ラストシーン近くで、生き残った犯人を捕まえてパトカーで護送していく時に、僅かな金のため、どうしてこんなことをしたのか、彼女が訊ねるんです。でも犯人は何も答えられない。すると彼女は「(私には)理解出来ないわ」ってつぶやく。そうして、彼女は、また穏やかな暮らしのなかに戻っていく。私生活は、いたって普通で幸せな人。その人が、とんでもない犯罪に遭遇して、警察官として事件を解決していく。わたしも私立探偵ものを書くならそういう普通人で書きたいと思ったんです。その二つがあわさってできたのが、このシリーズです。
こちらのインタビューが掲載されているオール讀物 11月号
2018年11月号 / 10月22日発売 / 定価980円(本体907円)
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