書評

スーさんの魔法の筆から繰り出される言葉の数々に、してやられる快感

文: 中野信子 (脳科学者)

『女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。』(ジェーン・スー 著)

『女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。』(ジェーン・スー 著)

 スーさんは、めったにお目にかからない、できれば何十年もお付き合いしたいタイプの人です。そうした関係を維持するには、互いの間にある程度の緩衝地帯を設けておくという工夫が必要でしょう。時には近づいてもよいし、一人でいたいときには一人でいられる、という風にしておくのが、どちらにとっても居心地よくいられる、最良の方法なのではないでしょうか。一見やり取りがない時間が長いこと続いても、心をつなぎたいときにはいつでも、つなぐことができる。そしてベタベタといつまでも一緒にいることはなく、再び一人の時間を楽しむためにそれぞれの日常へ帰っていくのです。

 はじめて私がスーさんの書く文章に出合ったのはもうずいぶん前のことです。その頃、私は大学院生で、モテ、とか、ゆるふわ、などとは完全に無縁の生活を送っていました。むしろ非モテかつガチでありバリであったので、わかりやすいいわゆる女子力が高いとされる人々のキラキラ感とは違う部分に自己評価の機軸を無意識に求めていたのでしょう。そんな状態だったものですから、スーさんがモテやゆるふわやキラキラ等に対して吐いている冷静な毒と、うっすらと自虐を感じさせる鋭い言葉の数々は私の心に深く刺さり、大いに響きまくったのです。スーさんと私は境遇こそだいぶ違うのですが、30代を迎える女子の抱えるモヤモヤ感をこんなにクリアカットに表現できる人がいるのだということに喝采を送りたいような気持ちにもなりましたし、その驚異的な表現力に妬みの心さえ抱いたことを白状しなければなりません。

女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。ジェーン・スー

定価:本体600円+税発売日:2018年11月09日


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