独演会での出会いからしばらくして、私が杉並区西荻窪に引っ越すと、近所の魚屋さん「魚庄」の店先でばったりと顔を合わせた。なんと、カツ代さんの「キッチンスタジオ」は、私が引っ越してきた借家の一軒おいた隣りのマンションだったのである。これをきっかけに、おつきあいが始まった。
当時、私は毎月一回、茨城までお米の買い出しに出かけていた。正確に言うと、茨城県阿見町の米作り名人浅野芳夫さんが丹精込めて育てたコシヒカリと浅野家の井戸水を分けていただきに、車を飛ばして高速をひた走り、浅野家の朝御飯を食べて帰ってくるのだった。
この浅野名人のコシヒカリをカツ代さんにも食べていただきたく、ある日、お米を抱えてキッチンスタジオを訪れた。
迎えてくださったカツ代さんは、お米のお返しと言って、昨日、小松空港で見つけたという「加賀棒茶」を分けてくださった。
こういうときも、黙っては渡さない。「これは普通のほうじ茶の淹れ方ではいけません。美味しくありません。短い時間で、とても優しいお茶がいただけます。昨日、加藤(助手)とどのくらいの時間がいいか、何度もやってみました。三〇秒です、三〇秒。これ以上、時間が経つと美味しくありません。どうぞ!」こんな具合だった。これも「カツ代のレシピ」と言ってよい。
こちらもおすすめ
プレゼント
-
『赤毛のアン論』松本侑子・著
ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。
応募期間 2024/11/20~2024/11/28 賞品 『赤毛のアン論』松本侑子・著 5名様 ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。