ご近所だから、こういう物々交換を頻繁にした。物々交換ばかりではない。大阪・「道頓堀今井」のうどんの傑作「あんかけうどん」を教えてくださったのもカツ代さんで、頻繁に情報交換もしたのだった。
「牡蠣パーティ」が生まれたのも、これがきっかけだったと言ってよい。私が、気仙沼の先、唐桑・水山養殖場の畠山重篤さんの牡蠣を絶賛すると、一緒にその牡蠣をいただきましょう、ということになり、毎年「キッチンスタジオ」で、「牡蠣尽くし」の会を開いた。このときのカツ代さんの「牡蠣めし」の美味しさは筆舌に尽くしがたく、今でも忘れられない味となっている。
「カキフライ」だけが私の出番で、殻付きの牡蠣をみんなでてこずりながらも殻を開けて剥き、それを私がフライにする。なんとも手間のかかるカキフライ。パン粉の衣をつけても平べったい牡蠣は油の中ではじめはじっとしているのだが、しばらくたつと、菜箸越しにプルプルと小刻みに震える様子が伝わってくる。ここが揚げ時で、これ以上揚げていては、上等の生牡蠣が台無しになってしまう。これをカツ代さんに食べていただくと、大変お褒めの言葉をいただいた。そして、翌年からは私の揚げるすぐ横で、助手を買って出てくださった。
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